<シネマ歌舞伎>『一谷嫩軍記~熊谷陣屋』

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作品詳細

忠義のために、わが子を犠牲にした武士がいた…。
戦の世の無常と、人生の儚さ。生きる意味を問う古典歌舞伎の名作。
中村吉右衛門、初代から受け継いだ渾身の舞台。
その舞台への想いを語るインタビューも収録した必見の映像。
「平家物語」を題材にした『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』は一七五一年に人形浄瑠璃として初演され、翌年、歌舞伎になりました。全五段の物語の中で『熊谷陣屋(くまがいじんや)』は三段目にあたります。
源平合戦のさなか、源氏の武将・熊谷直実は平家の若武者・平敦盛(たいらのあつもり)を討ちました。実は敦盛は後白河法皇(ごしらかわほうおう)の子であり、その母・藤の方は、かつて熊谷を救った恩人でありました。
生田の森の熊谷の陣屋に、主君源義経が来訪。敦盛の首実検が行われることとなります…。
熊谷直実は一の谷の合戦で平敦盛を討ち取り、陣屋に戻ってくる。直実は妻の相模と敦盛の母・藤の方に敦盛討死の様子を語り、敦盛の首の検分に備える。やがて主君の源義経が現れ、直実は首を差し出すが、その首は何と直実の息子・小次郎の首…。直実は敦盛を救うため、同じ年齢のわが子を身替りにしたのである。直実は悲しみをこらえ、驚き取り乱す相模と藤の方を制する…。
敦盛を救う務めを果たした直実は暇を願い、「十六年は一昔、夢だ夢だ」と涙ながらにわが子の短い人生を嘆き、世の無常を悟って、出家する。
大義の前には、わが子の命さえも犠牲にするのが武士の社会でした。しかし剛毅な武士といえども子を討った悲しみは重く、直実が小次郎の首に驚く相模と藤の方を制する「制札の見得(せいさつのみえ)」には、その苦悩が表れています。戦の世の無常、人生の儚さが胸をうつ重厚な義太夫狂言の名作です。
初代吉右衛門の当たり役の一つであった熊谷直実を吉右衛門、相模に藤十郎、義経に梅玉、藤の方に魁春、堤軍次(つつみのぐんじ)に又五郎、弥陀六(みだろく)に富十郎と、歌舞伎座さよなら公演最後の月ならではの豪華出演者です。
(上演:2010年/平成22年4月・歌舞伎座/公開:2011年/平成23年10月)

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