歌舞伎に始まり、幾度となく映画化やドラマ化された時代劇の定番「忠臣蔵」2017年に発見されたフィルムから修復した、1910年製作の「最古の忠臣蔵」を、国内外で活躍する弁士・片岡一郎氏と楽団の演奏による<活弁トーキー版>として放送します。合わせて、昭和30年代のブームの火付け役とも言われる「大忠臣蔵」を二部作に再編した「假名手本忠臣蔵」「義士始末記」など5作品を特集放送!
・[NEW]2023/11/13 「時代劇傑作選、忠臣蔵特集」特設サイト公開!
日本映画初のスター俳優として知られる尾上松之助は千本をこえる主演作を撮ったとされるが、フィルムのほとんどは散逸し、現在見ることが出来るのは断片を合わせても十数本である。本作は現存最古の映画版『忠臣蔵』であると同時に、松之助の若々しい身体的演技が確認できる意味でも極めて重要な作品といえる。まだ映画が舞台劇と地続きであったからこそ成しえたいくつかの表現は現在の映画からは失われてしまっている。それらを単に古い、無価値なものと判断するのは適当ではない。多くの庶民を活動写真感へ向かわせた根源的な映画の魅力が本作には秘められているのだ。(片岡一郎)
初期の日本映画には、声色弁士といって現在の声優のように、複数の弁士が個々に役割を受け持ち、声を付け、また伴奏音楽も芝居の下座音楽が主に用いられていたが、今回は往年の弁士たちが吹き込んだ録音を元にしながら台本を新たに書き直し、弁士一人ですべての役を演じる独演形式とし、音楽も和洋合奏形態を採ることで古格を保ちつつ新たな表現を実現した。
今回の新録音は無声映画を回顧の対象として消費するのではなく、古典作品を時代に応じた新作として再提示できる可能性を示している。また弁士を、フィルムの発見者である私、片岡一郎自身が行っているのも、映画の発掘保存の点から意義がある出来事といえる。