作品詳細
第二次世界大戦末期、祖国を救うため妻子を捨てて連合軍側と極秘に和平交渉を進め、表向きは任地で死んだことになっていた父と娘の再会を描きながら、その姿を通して戦争告発に迫った社会派サスペンス。
昭和36年初夏。関西での取材を終えた新聞記者添田は、大和路で婚約者の野上久美子と合流した。大和路は久美子の亡き父・野上顕一郎がこよなく愛した場所であり、彼女は亡父に自分の第二の人生の出発を告げに来ていた。ところが唐招提寺の拝観者芳名帳の中に、亡き父にそっくりの、中国の古人・米帯の書に習った筆跡を発見した。翌日、久美子は添田を伴って筆跡の確認に向かうが、その部分だけが破りとられていた。