作品詳細
貧しさにめげず、愛妻の内助の功を得て、芥川賞を受賞されるまでの尾崎一雄の青春時代を明るくユーモラスにそして本当の愛情を描く珠玉作!
尾崎一雄の『もぐら横丁』『なめくじ横丁』『芳兵衛物語』等一連の私小説を原作とし「紺屋高尾」の吉村公三郎、「大仏さまと子供たち」の清水宏が共同脚色にあたった。監督は十数年ぶりにセットに入る清水宏。「一等社員」の鈴木博が撮影を担当している。「関白マダム」の佐野周二、「愛の砂丘」の島崎雪子、「次男坊」の笠智衆、「安五郎出世」の森繁久彌、若山セツ子などが出演し、他に丹羽文雄、壇一雄、尾崎士郎、等現役作家が芥川賞受賞祝賀会シーンに特別出演する。
「ねえ君、どういうわけで僕と一緒になる気になったの?」-緒方一郎(佐野周二)は、おいしそうにどら焼きを食べている妻の芳枝(島崎雪子)に聞いてみた。芳枝は、北陸の女学校を出て上京すると間もなく、二十三歳の貧乏作家緒方と知り合い、ひと月足らずで結婚した。天真爛漫で無邪気な芳枝は、貧乏生活を楽しんでいるようだった。ある日、二人の住む春光館の経営者が代わり、立ち退きを余儀なくされる。行くところのない彼らを見かねて、友人たちが借りていた長屋が提供された。そこは、インチキアドライターやちょっと変わった大家(日守新一)、近所迷惑なラジオを流している老人などがいる「もぐら横丁」だった。