作品詳細
「ついに泣かぬ弁慶も」とうたわれた武蔵坊弁慶が大泣きに泣いたその理由は…。弁慶の生涯でたった一度の恋を描いた義太夫狂言の名作。
源義経の正妻である卿の君の身代わりに、弁慶は、腰元しのぶの首を差し出させるよう申し出る。しのぶの母おわさは、女手ひとつで育て上げた娘を父親に一目会わせるまではと拒みますが、弁慶は襖ごしにしのぶを斬る。実は弁慶こそ、十七年前におわさがたった一度契りを交わした相手で、しのぶはその娘であったのだ。
クドキ、述懐など、義太夫狂言特有の見せ場も多く、時代物の様式美と人間の情愛を色濃く描く名作。橋之助(現・芝翫)の弁慶、彌十郎の侍従太郎、新悟のしのぶ、福助のおわさで。
(2005年/平成17年12月・歌舞伎座)