作品詳細
長男の死のショックにより記憶を失った母。そんな母のために嘘をついた家族が再生のためにもがく姿をユーモアたっぷりに描く感動作。家族の死と、そこからの再生という重厚なテーマを心に沁みいるハートウォーミングな喜劇に仕立てた、まったく新しい家族映画の傑作。橋口亮輔、石井裕也、大森立嗣などの数多くの作品で助監督を務め、本作が劇場映画初監督作となる野尻克己監督が、自身の経験を基にオリジナルの脚本を手掛けた。父・幸男役を岸部一徳、母・悠子役を原日出子、引きこもりの長男・浩一役を加瀬亮、長女・富美役を木竜麻生がそれぞれ演じるほか、岸本加世子や大森南朋らが脇を固める。野尻監督は本作で新藤兼人賞・金賞、ヨコハマ映画祭森田芳光メモリアル新人監督賞、高崎映画祭新進監督グランプリ、毎日映画コンクール脚本賞などを受賞したほか、本作はキネマ旬報ベスト・テン第6位に選ばれた。
鈴木家の長男・浩一がある日突然この世を去った。母・悠子はショックのあまり意識を失ってしまう。浩一の四十九日。父・幸男と娘の富美は、幸男の妹・君子とアルゼンチンで事業を始めたばかりの悠子の弟・博とともに、意識を失ったままの悠子の今後について話し合っていた。そんな中、悠子が病室で意識を取り戻す。慌てて駆けつけた4人の姿を見て、悠子が尋ねる。「浩一は?」。思わず目を見合わせる4人。そこで富美はとっさに「お兄ちゃんは引きこもりをやめてアルゼンチンに行ったの。おじさんの仕事を手伝うために」と嘘をついてしまう…。