作品詳細
ある豪家の主人の遺言をめぐって、その息子の未亡人親子と、悪人の姪や弟たちとの財産争いが起きる。悪人たちの企みすました化けの皮が未亡人に味方する和尚さんのうれしい一世一代の大芝居をうつことに…。牧歌調豊かな人情喜劇。
村一番の旧家である宍戸家の当主敬左衛門の死により、その莫大な遺産相続権をめぐって奸智と陰謀が渦巻いていた。凡海は死んだ敬左衛門と俳諧仲間であり肝胆相照らし合った和尚である。今様一休であり仲々出来た坊主であった。折りも折敬左衛門の嗣子故敬太郎の遺族妻澄江が、一子敬一を連れて引揚で内地へかえり、凡海の観念寺へ宿泊した。実は敬左衛門の意志はこの澄江に遺産を譲ることにあったのであるが、秋山らの画策は公証人である小悪党兼田をして遺言状作成にあたり当然澄江と書かれるべき箇所に秋山邦子と書かせる。澄江は血縁の薄情に泣かされながらも凡海の暖かい心に励まされ敬一を守り生き抜こうとするが、世間は更に冷たかった。しかし敬左衛門が今際の際に凡海に託した願いは凡海が手に入れた俳句帳に総て書かれてあった。そこで凡海は故人の四十九日法要の日一世一代の芝居をする。