MUSICAL『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』

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作品詳細

ミュージカル「SMOKE」や「BLUE RAIN」など、日本でも人気を博した韓国発ミュージカルを手掛ける演出家チュ・ジョンファ。彼女が描き出す人間の深い業に寄り添うのは、音楽ホ・スヒョンの扇情的で美しい音楽。2018年、韓国で上演され注目を集めた本作を、河原雅彦の演出、河原と7年ぶりにタッグを組んだ中村倫也の主演で上演した日本版。
出演者は5名のみ。ベートーベンの生涯を通して描く、彼の音楽への情熱、音楽家として致命的な“難聴”という病に蝕まれていく苦しみ、その運命に立ち向かっていく人間の美しさ。さらに男女の愛情ではない〈不滅の恋人〉との関係。5人は、絶望の先にある希望をどう紡いでいくのか…

残り少ない人生を前に書かれたベートーベンの1通の手紙。そして、その手紙が一人の女性の元へ届く。聴力を失い絶望の中、青年ルードヴィヒが死と向き合っていたまさにその夜。吹きすさぶ嵐の音と共に見知らぬ女性マリーが幼い少年ウォルターを連れて現れる。
マリーは全てが終わったと思っていた彼に、また別の世界の扉を開けて去っていく。新しい世界で、新たな出会いに向き合おうとするルードヴィヒ。
しかしこの全ては、また新たな悲劇の始まりになるが…。

(2022年10月29日~11月13日 東京芸術劇場プレイハウスほか)

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レポート

ベートーヴェンの半生に中村倫也が挑んだ、観る者の心を揺さぶる激情のミュージカル

 

韓国で2018年に発表され、昨年、中村倫也主演で日本初上演したミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』。演出と上演台本を手掛けたのは7年ぶりにタッグを組み、中村とは旧知の仲である河原雅彦。多くの観客を感動の渦に巻き込み、話題となった本作の放送を前に、その見どころをレポートで紹介。

 

韓国発のミュージカルは感情の起伏が激しい作品が多いことで知られている。今作も同様で、主人公・ルードヴィヒが父親からの厳しい音楽の英才教育を受ける幼少期から始まり、モーツァルトの影を追い続ける苦悩、栄冠を得た矢先に襲いかかる難聴の病、才能ある幼い子の命を守ってやれなかった自責の念、そして再びつかんだ栄光……など、目まぐるしく物語が展開していく。主演の中村倫也は、それら全てを余すことなく見事に体現。ときに激しく、ときに繊細に心の声を表す歌声も芝居と一体化させるように溶け込ませ、終始、観客を魅了していった。

 

なかでも今作で目を引いたのは、ルードヴィヒと彼を取り巻く登場人物たちとの対比だ。ルードヴィヒは物語の序盤から難聴に苦しみ、自ら命を絶とうとする。そんな彼の前に現れたのが、同じ故郷ボンの出身で、彼の奏でる音楽にいつも夢や希望を感じていたという木下晴香演じるマリー。彼女はルードヴィヒの音楽に励まされ、女性でありながら建築家になることを夢見ている。その強い意志を目の当たりにし、“夢なんて見るだけ不幸になる”と思い続けてきたルードヴィヒは未来を向き始めるようになる。抗えない逆境の中、諦めて沈んでいくか、はたまた前を向けるかは、己の心の強さによって変わっていく。やがて自身の運命を受け入れたルードヴィヒは、静寂の中で聞こえる自分の音楽を形にし、音楽家としての才能を開花させていくのだが、その躍動感あふれる展開は観る者に大きなカタルシスを与えていった。

 

また、音楽の神に愛されたルードヴィヒはその後、自身の才能を継がせるため、甥のカール(福士誠治)を養子にし、音楽の英才教育を施していく。ここでは“それぞれの親子の在り方”が描かれているように感じられた。かつて父から厳しい練習を強いられていたルードヴィヒは、それを“飼育”と称した。そのため、カールに対しては優しく音楽の楽しさを伝えようとする。しかしながら、ルードヴィヒは父のスパルタに辛さを感じながらも音楽の世界に悦びを感じ、一方のカールは自分の才能のなさに気づき、やがてルードヴィヒから日常的に押し付けられる音楽に嫌悪感を持つようになる。自身の父との過去を反面教師にしながら、無意識に自分と似た不幸をカールに与えてしまったルードヴィヒ。この親子の対比もまた、多くの観客の心を締め付けていった。

 

一人の偉大な音楽家を題材に、さまざまな人間模様を多面的に描いた本作。そこには才能への嫉妬や挫折、栄光など、誰もが一度は感じるであろう感情が多く詰め込まれている。またそれは、決してルードヴィヒのような激動の人生でなくても共感できるものばかりでもある。観劇後、自身の半生を振り返り、同時にいつまでも心に留めておきたいと思わせるミュージカル。そんな感動の時間をぜひ今回の放送で味わっていただきたい。

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