親の金を使い自由な生活を送っていた大学生のティアン。実は心筋炎を患っており、移植手術によってなんとか一命をとりとめた。自分の命を救った心臓提供者に興味を持つティアンは、トーファンという女性が提供者であることを知る。彼女が住んでいたという山中の小さな村へ向かうティアン。そこでトーファンと互いに惹かれあっていた森林警備隊長のプーパーと出会う。
本作は、世界中で支持されるドラマを次々と生み出すGMMTVが制作。原作は大人気の同名小説であり、繊細かつ美麗な構成・描写・映像に定評のあるAof・ノファナック監督がメガホンをとっている。放送されるなり、ファンタジー色とリアリティが共存する世界観、ロマンチックなラブストーリー、深みのあるキャラクター像、それらを表現するキャストたちの芝居が高く評価された。その証の一端として、本年にタイ内外で開催されたコンテストでは、作品・キャストともに栄えある賞に輝いている。そして本作での初共演で、アースとミックスという強力コンビが新たにタイドラマ界の最前線に登場し、存在感を発揮中だ。
「軍人に間違われるほど厳格」と言われるプーパーと、父親が元官僚で都会育ちのティアン。当初は相容れなかったが、プーパーの優しさや命がけで村と村人を守る姿、ティアンが村人たちにありのままで向き合う姿を知るにつれ、惹かれ合う。どちらも恋に不慣れなだけに、からかい合い本心を隠してしまうが…。言葉はなく見つめ合う瞬間が多々あり、その目は口以上に雄弁。プーパーがティアンに注ぐまなざしは情熱的で、それに対してティアンが小首をかしげながら上目遣いで覗き込むと、完全にふたりの世界が出来上がる。また不慣れと思いきや、プーパーは意図して肉体美をさらし、ティアンはプーパーの心の内を知るため言葉で誘導することも。緩急強めなふたりの関係は目が離せない。
アースとミックスは初共演ながら以前から交流があり、恋仲を演じることに照れがあったそう。しかしミックスが出演とドラマデビューを決めたのは、信頼するアースとの作品だからこそと明かしている。お互いの存在によって、アースは培ってきた芝居力をぶつけ、ミックスは俳優としての可能性をスタートさせたのだ。プーパーとティアンが互いに向ける“泣き笑い”の表情など、引き出し合う感情に心をギュッとつかまれるはず。一方、トーク番組やSNS上ではやんちゃなやりとりで“仲よくケンカ”し、愛猫たちを介して(介さずとも)たびたび一緒に過ごす姿を公開。親密度はアップ中であり、今後もコンビ力の見せどころが期待される。
本作の舞台は、タイ北部にあるチェンマイのパーパンダーオという小村。国境近くの危険区域であり、水道や電気は一部しか通じず、携帯電話も使えない。そこにあるのは雄大な自然と、トーファンが「1000の星の物語」と題した日記に書き残した伝説。大みそかの夜、森の守護霊が住むとされる「パーパンダーオの崖」で1000個の星を数えられれば、願いが叶うというのだ。トーファンの想いを継いでティアンも目指すようになる崖は、朝焼けと夕焼け、昼の陽ざし、暗闇のなかでまたたく星に照らされ、さまざまな美しさを見せる。まるでプーパー、ティアン、トーファンの心が交差するさまや、彼らの命の輝きを表しているようであり、引き込まれるほどに切なさも味わうことに…。
パーパンダーオ村の主産業である茶葉の栽培や刺繍を行う様子、「エプオンオー(豚の脳ミソ)」などの郷土料理、受け継がれる習わし、心に根付く精霊信仰、そして守り続けている美しい自然…。トーファンが日記に記し、それをたどってやって来たティアンの目を通して、パーパンダーオ村の暮らしや文化を追体験している感覚になる。何より経済的に豊かとは言えず困難は尽きないなか、大人も子供も一丸となり懸命に生きる村人たちから、人生に必要なことを学べるはずだ。
恵まれた暮らしをしてきた“よそ者”のティアンに、ボランティア教師として着任した学校の生徒たちは、好きなものやしたいことを素直に伝えてくれる。屈託がなくけなげな子供たちから多くを教わったティアンは、「自分には何ができるか」を考え、やがて村人たちを導くようになっていく。ティアンが生徒とともに学び、ティアンと村人が力を合わせて暮らしを築き、プーパー、ティアン、トーファンが愛と命を交わす。人生のすべては誰かと教え合い、与え合うことで続いていくものだと気づかされる。