2007年の青島。新年度を控えた8月31日、一足早く林肖(リン・シャオ)は日本語学院大学の寮にやってくる。まだ電気も通っていない静けさが漂う寮で一夜を明かす。誰もいないと思われた寮には、リン・シャオと同じくひっそりと一夜を過ごす同級生の邵年(シャオ・ニエン)がいた。翌日、新入生が次々に入寮してくる。ルームメイトの季宰(ジー・ザイ)、負けん気の強いアネゴ肌の謝婷楓(シエ・ティンフォン)らと賑やかなキャンパスライフをスタートさせる。
ある時、シャオ・ニエンはリン・シャオの部屋で、大ファンである芸能人とリン・シャオが一緒に写っている写真を見つける。きっかけは、憧れの芸能人と親しくなりたい気持ちだったシャオ・ニエンだがリン・シャオと同じサークルで活動し、接点を多く持つ内に、内面に抱えた孤独、人知れず背負っている責任、将来の夢など知っていく。いつしかシャオ・ニエンとリン・シャオはお互いかけがえのない存在となり、衝突を重ねながらも友情を育んでいく。
徐新馳は撮影当時18歳。学生時代の輝きと葛藤を等身大のフレッシュな魅力で演じる。バディを組むのは、ドラマ初出演にして、主演の陳沐(チェン・ムー)。豆瓣などのSNSでも、「役柄と本人の雰囲気がすごく合っている。」の声多数。また、監督は注目度急上昇中の新鋭監督・李泊龍。演出だけでなく、脚本や作詞作曲まで手掛ける。
ニエンやシャオたちは、人には言えない家庭の事情やトラウマを抱えているため、自分をさらけ出すことに臆病で、友達付き合いや恋愛も不得手。北京五輪開幕の日、世間はお祭り騒ぎのなかで語り明かすそれぞれの過去は、胸が痛くなるものも……。だからこそ彼らは、自分らしく生きられ、それを受け入れてくれる人と過ごす「家」を求めている。大学生という子どもから大人への過渡期に、ことさら不器用な彼らが「最愛」と思える相手と一喜一憂しつつ関係を築く姿、そして出会いの場である寮と最愛の人がいる場所を「家」にしていく過程は、青春の凝縮といったところ。なつかしさや憧れを感じて、応援せずにはいられない。
本編への登場当初は、涼やかな容姿も相まってクールな雰囲気のニエン。ところがシャオを認識すると「絶対モノにする」と豪語し、彼にだけ発揮する一途さ、スキンシップ、お節介なほどの世話焼きぶりや甘えっぷりは、かなりの熱量だ。シャオに冷たくされると「またすねてる」と指摘して、自分まですねてしまうなんて一幕も。一方のシャオは、最初こそニエンの勢いに押されぎみだが、だんだんとそうされるのが日常になり、少し距離が生まれるだけでさみしさを覚えるように……。相手が大切なあまりに「心配をかけたくない」と言っては、隠し事をしてすれ違うことも多いふたりだが、その間に強くなる特別感や独占欲がお互いをより離れがたい存在にしていく。まさに「最愛」と言える関係は、うらやましく映るはず。
「舞台で輝きたい」という夢を持つニエン。『君を見つけた』という曲を自作し、歌うことで救われてきたシャオ。文芸部でペアを組み歌う機会を得ると、「シャオニエン」とセットで呼ばれるようになるほど絶妙なハーモニーを聴かせる。ひとりでひっそりと歌ってきたシャオは、ニエンとともに観客を前にして歌い、初めての充足感を知る。こうしてステージ上でも結びつくふたりなのだった。劇中でニエン、シャオ、ティンフォンが歌唱する曲は、あたたかいメロディーと彼らを表したかのような歌詞が印象的。またキャストたちの歌声は繊細で美しく、思わず聴き入ってしまう。
3組の“犬猿コンビ”が仲よくケンカしじゃれ合う様子は、本作の名物といえる。ニエンとティンフォンは、性格も口も率直な者同士だけに口ゲンカが絶えないが、“シャオ好き”という最大の共通点から、文句を言いつつも行動をともにする。ニエンとミンハオは、やはりシャオの存在を通して、ニエンが一方的に対抗心ややきもちを向けるのだが……。ニエンの素直すぎる言動にペースを崩されたミンハオが、ふと無防備な顔を見せることも。さらにザイとヤンは、青春真っ盛りの男子学生そのものといったノリ。一緒にいるとテンションが上がり、楽しむのもふざけるのもお互いが一番といったベストコンビぶりだ。
シャオには面倒見のいい姉のように接し、理不尽なことには先輩相手でもきっちり反論してみせるしっかり者のティンフォン。頼もしい存在であると同時に、ドラマやトラブルを引き起こす存在でもあり、仲間たちにとっても本作にとっても欠かせない人物。ただし恋愛ごとにはピュア、奥手、自信なしの三拍子がそろっており、好意を抱くミンハオに対し、自分からは「友達」のラインを踏み越えられない。恋に振り回されて幼い顔を見せるギャップが魅力であり、ミンハオとの甘ずっぱいやりとりにドキドキする人は多いのでは……。
裕福な家庭に生まれた才色兼備で、同級生ともつるまないウー・ミンハオは、大学内で「孤高の人」などと呼ばれているらしい。しかしシャオに対しては出会った当初から興味を示し、体当たりのニエンとは真逆のバランスとタイミング、そして柔らかい笑顔と優しさを与えて寄り添うようになる。シャオの歌声や紡ぐ音楽といった芸術性に惹かれたことに始まり、物静かだが芯は強いという人柄にも惹かれたようだ。そんなミンハオとシャオの穏やかなやりとりは、本作の癒やしになっている。
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