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衛星劇場オンデマンド 松竹新喜劇「はるかなり道頓堀」

はるかなり道頓堀 | 衛星劇場オンデマンド 松竹新喜劇|衛星劇場

あらすじ

 道頓堀が出来て四百年余り。賑やかなのは今も昔も変わりませんが、その昔は道頓堀には芝居小屋が建ち並び、中座・角座・浪花座・弁天座・朝日座の五座が隆盛を誇り、人通りが増えるにつれ川岸沿いに客目当ての茶店が軒を並べていたそうです。その数が四十八軒にもなり芝居茶屋は、いろは茶屋とも呼ばれていたそうです。  この芝居はそういった良き時代ー昭和初期に端を発し、昭和三十六年頃までの三十余年間の道頓堀と、そこに働く芝居人たちの人生の明暗を浮き彫りにしたものです。さて、舞台は昭和初期の芝居茶屋「松嶋」。ここで働くお茶子のお初とおきく姉妹。お初には亭主がおり、この亭主平吉も同じ松嶋で男衆として働いていました。
 当時の芝居茶屋は今風に言うところの、さしずめプレイガイドとでも申しましょうか、切符の世話から観客の湯茶や飲食の接待まで致しました。そしてこの仕事に直接当たっていたのがお茶子です。芝居の当事者は勿論、観客にとっても欠くことのできぬ大切な人たちなのですが、社会的にはそう恵まれていなかったようです。
 「たかがお茶子風情が…」と云ったような言葉がよく聞かれたそうです。
そのお茶子のおきくが、当時、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いで人気急上昇の若手役者ナンバーワン青柳啓二郎の子供を身ごもったのですから、事はおだやかではありません。
無論、このことはおきく一人の秘密で、当の青柳すら知らないのですが、彼女の身体の異常に先ず松嶋の女将おますが気付き、姉のお初の知るところとなりました。
 おきくの相手の男が青柳啓二郎だと知ったお初の驚き様は云うまでもありません。
 彼女は平吉と夫婦になる前、秘かに青柳の美しい舞台姿に惹かれ、ときめきを憶えたことがあるからです。おきくはもともと身体は弱いが、お茶子には勿体ない程の器量よし、と噂された女です。
 いま売り出し中の青柳啓二郎とお茶子風情のおきくとが…と信じ難かったお初も、青柳とおきくの仲は頷けぬこともありません。
 「おきくの相手は誰や」と女将に詰問されたお初は、「相手の男は平吉だす」ととっさにいってしまいました。
 「そ、そんな阿保な!!」慌てたのはその場に居合わせた夫の平吉。口もきけないほど動転するのでした。
 お初の咄嗟の嘘で青柳の人気には傷がつかなかったのですが、どうにもこうにもやり切れないのは平吉です。周りからは罵られ挙句、松嶋からもヒマを出されてしまったのです。おきくは人知れず青柳の子供を産むと消えるように息をひきとってしまいました。
 それから三十余年の歳月が流れ…おきくの産んだ子は、お初と平吉の子供として成長していたのです。そんなとき東京の劇場で〝青柳啓二郎倒れる〟のニュースが流れたのです。

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