作品詳細
明治維新後、急速な時代の転換にとり残された没落士族の苦悩と悲劇。
河竹黙阿弥の「散切物」の代表作で、あまりの悲惨さに気がふれてゆく幸兵衛の凄絶な様がみどころ。幸四郎(現・白鸚)が初役でつとめ迫真の演技を披露した。没落士族となった船津幸兵衛は、筆を売って生計を立てている。妻に先立たれ、目の不自由な娘お雪ら3人の子供を抱えた生活は苦しく、高利貸しや代言人の容赦ない取り立てに身ぐるみ剥がされてしまう始末。もはやこれまでと一家心中を決意した幸兵衛は、赤ん坊から殺そうとするが、あまりの辛さに気が触れ箒を振り回し暴れたかと思うと、家を飛び出し、川へ身投げしてしまう…。
(2006年/平成18年3月・歌舞伎座)