作品詳細
本来は八幕三十場の長編だが現在は「木更津の見染め」「赤間別荘の逢曳」「源氏店」の上演が多い。与三郎は武家の出で大店の養子となった人物のため、後に無頼漢の凄みを見せてもどこかに若旦那気質がのぞく。こうした二面が初演で大当りした八世團十郎によくはまったようで与三郎役には欠かせない味である。お富ともども姿のいい美男美女のコンビであることも望ましく、今回は梅玉の与三郎、玉三郎のお富というまさに絶好の配役。湯上がりのお富の美しさ、与三郎の「しがねえ恋の情が仇」という名セリフなど、江戸世話狂言の粋な感覚が舞台に溢れてまるで浮世絵を見るような名作。
(1997年/平成9年3月・歌舞伎座)