作品詳細
作
演出
『藪原検校』(1973年)、『小林一茶』(1979年)と共に、井上ひさし「江戸三部作」を形成する本作は、その完成度から井上ひさし屈指の人気を誇る傑作戯曲。かねてより再演の要望が高い井上ひさし中期の大傑作が、こまつ座で19年ぶりに上演された。
主人公・徳を、2020年読売演劇大賞・男優賞を受賞し、数々の舞台・ドラマ・映画で活躍する山西惇が、紅花の里・紅花問屋の美しい女将おたか役を、井上作品初登場の倉科カナが演じる。演出は井上演劇の真の担い手であり、2011年に新国立劇場にて『雨』を演出した栗山民也。満を持して、こまつ座での『雨』の演出を手掛けた。
時代は江戸、欲に目が眩んで、羽前の国(現在の山形県)に入り込んだ江戸者が、言葉の通じない世界で、いかにその言葉の体系に精神を押し潰されていったかを、のべ百人近い登場人物を24名の出演者のみで演じきる。
【あらすじ】
江戸のしがない金物拾いの徳は、平畠藩の大きな紅花問屋の当主である喜左衛門が自分と瓜二つで、しかも失踪中という話を聞かされ、東北に旅して、喜左衛門になりすます。喜左衛門の美しい妻おたかと結構な衣食住を手に入れた徳は、持ち前の起用さを発揮して、夜も寝ずに平畠ことばの習得に励み、殺人さえ重ねる。しかし、ひたすら自分を殺して、本物の喜左衛門になりおおせようとした徳を最後に待ちうけていたのは、どんでん返しのおそるべき死の罠だった。幕府の追求をかわすために身代わりを育てて死に追いこむ、平畠藩を挙げての精密な謀略である。降りしきる雨の陰鬱な音が笑いと恐怖が背中合わせになった緊迫感の先にあるのは。
(2021年9月18日~9月26日 世田谷パブリックシアター)