黒薔薇の館

作品詳細

前年の『黒蜥蜴』に続く、深作欣二監督による、女装の麗人・丸山明宏主演の異色作。黒薔薇の館に君臨する謎の美女と、組織を裏切って人を殺し、組織と警察の両方から追われる青年との死をも恐れぬ絶対の愛を描く。前作は三島由紀夫の舞台劇の映画化だったが、今回は映画用のオリジナル・ストーリー。田村正和が謎の女に出会い破滅していくクラブ経営者の息子を熱演。

藤尾竜子は、佐光が経営するクラブ「黒薔薇の館」で純粋至上の愛を歌い、男たちを陶酔させた。崇拝者たちは、種々の手段を講じて竜子に近づこうとしたが誰一人、彼女の気に入る者はいなかった。佐光もまた、彼女を愛するものの一人だった。ある日、竜子のかつての男が、復縁を迫り混血少年のジョージと決闘して即死した。その惨事を見て竜子の瞳は、妖しくも美しく輝くのだった。それから数日、竜子は佐光に自分の愛の遍歴を打ち明けた。それは、求め続けながらいまだ獲得出来ない絶対の愛についての嘆きだった。その時佐光は、彼女を慰め、「黒薔薇の館」を彼女の手に委ねた。竜子の意匠のもとに改装された「黒薔薇の館」は官能的な幻想の世界に変貌し、会員たちを驚かせた。「館」の主人になった竜子は女王の気品を備え、ますます男たちを魅了した。佐光はそんな有様に幸福だった。しかし、彼の幸福は長続きしなかった。佐光と亡妻との間に生まれた一人息子亘が舞込んで来たのだ。

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