作品詳細
銀座にほど近い芸者屋を舞台に、ともすると特別視されがちのこの社会に生きる芸者の生態を、或る時は悲しく、或る時は哀れさの中に生まれた滑稽さを描く!
銀座にほど近い、芸者屋"しづもと"そこには、人生の悲劇にささやかな抵抗を続ける、いわゆる芸者族が、その日を送っている。女将いくよは一人者の将来の不安から、行く末面倒を見て貰うことを交換条件に、貧しいしかも優秀な青年を新聞広告で募集し、学費と生活資金を与えて大学に通わせている、いわば、養子様組、私設的養老保険、とでもいう様な、ちょっと用意周到でありながら何処か筋の一本欠けている、馬鹿なほどのお人好しである。今日もいくよは、矢ノ口英作を訪れ、「英ちゃん、ねぇ、頼むから、立派な技師になるってこと、私の養子になるってこと、本当に約束してよ」と念を押すのだった…。