作品詳細
谷崎潤一郎が大正11年に雑誌「新小説」に発表した戯曲で、登場人物は三人のみ。恋への執着を異常なまでに見せる友之丞(三津五郎)、その友之丞に夫を討たれたお国(扇雀)、そしてお国に連れ添う若党の五平(勘太郎=現・勘九郎)。お国と五平は仇討ちの旅に出るが、この二人も主従の関係を越えた男女の仲という、それぞれに愛憎が絡み合う特異な設定の異色作。初めは見えて来ない三人の関係が次第に明らかになり、物語が進むにつれ観客はスリリングな展開に引き込まれて行く。
(2009年/平成21年8月・歌舞伎座)