作品詳細
鎌倉雪の下の源氏店。和泉屋の大番頭、多左衛門の妾宅では、湯上がり姿のお富が化粧をしています。そのお富に番頭の藤八が付きまとうところへ、小遣いをたかりに来た蝙蝠の安五郎が相棒を連れて現れます。「切られ与三」と異名を取り、体中に傷跡のあるその連れの男はなんと、かつて愛した与三郎――3年前、伊豆屋の若旦那だった与三郎と元芸者のお富はひと目惚れし密会を重ねますが、当時お富を囲っていた旦那に知れると、与三郎は瀕死の重傷を負わされます。一方のお富は身投げしますが多左衛門に救われます。そんな事情を知らない与三郎は…。
互いに死んだと思っていた男女の不思議な巡り合いを描く傑作。お富と再会した与三郎の「しがねえ恋の情けが仇」という名せりふは聞きどころ。
(2020年/令和2年8月・歌舞伎座)