作品詳細
義理と人情を描いた味わい深い名舞台。
水戸街道、取手にある宿・安孫子屋の店先。親方に見放された取的(とりてき=下っ端力士)の茂兵衛と、自暴自棄な生き方をする酌婦のお蔦が出会う。一文無しで行き倒れ寸前の茂兵衛を、お蔦がきまぐれに助けたことで、茂兵衛は生きる力を蘇らせる。お蔦はそれを忘れてしまうが、茂兵衛には忘れられない思い出となる。やがて二人の運命は大きく変わり、思いがけない形での再会が待っていた…。
昭和6年に東京劇場にて初演された新歌舞伎。「股旅物」を得意とした長谷川伸の作品の中でも、義理と人情を描いて最高傑作と呼ばれる名作。十七世勘三郎の茂兵衛に、延若の辰三郎、我當の弥八、吉右衛門の儀十、勘九郎(十八世勘三郎)の根吉、歌右衛門のお蔦で。
(1983年/昭和58年11月・歌舞伎座)