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小西康陽 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

こにし・やすはる◎1959年2月3日、北海道札幌生まれ。85年、ピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。以降、作詞・作曲・編曲家、プロデューサー等、音楽家として多方面で活躍。時間を見つけては名画座に足を運び、膨大な鑑賞数を日々更新している無類の映画ファン。 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

2024年10月30日、アルバム『失恋と得恋』をリリース。詳しくはこちら

 

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2月 『彼を殺すな』『旅鴉でござんす』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

彼を殺すな | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 2月は、『彼を殺すな』をチョイス。船の機関士だった男が高潮に悩む漁村を救うため、悪徳土木会社に立ち向かう社会派の作品です。
 元機関士の辰を演じたのは佐野周二、ヒロインの房子役は高峰三枝子。悪徳土木会社の社長・古賀を小沢栄、房子の父で地域の有力者だったものの古賀に取り込まれてしまう黒柳を千田是也が演じているのですが、物語の終盤でヒール役のふたりが唐突に改心し、力づくでハッピーエンドに持っていったような印象が拭えません。当時の松竹一押しの青春スター・高橋貞二が黒柳の甥役で出演していたのも、取ってつけたかのよう。もともとメガホンをとっていた岩間鶴夫監督が病気降板して原研吉監督が引き継いだ作品とのことなので、いろいろと粗が目立つのも仕方ない、ということなのか…。そんな中、桜むつ子は安定の飲み屋の女将役で、笠智衆も十八番の和尚役で登場。北龍二の悪役は新鮮に映りました。
 最大の見どころは、子役・堺正明(現・正章)の登場です。ザ・スパイダースに加入する少し前、青年時代に彼が出演した映画は観たことがありましたが、子役時代の作品は初めてです。ぜひともご本人に鑑賞していただきたい!
 さらに、高潮が村を襲うシーンも見ごたえあり。岸惠子主演の『忘れえぬ慕情』(56)も大迫力の台風襲来シーンが印象的ですが、今作も負けていません。ミニチュアを使って撮影していることがはっきりとわかるものの臨場感たっぷりなので、特撮好きの方におススメです。
 個人的には、村人を演じた信欣三が着ていたロックなシャツに目を奪われました。アメリカ国旗にインスパイアされたような派手なシャツを着こなすとは、さすが信欣三!

旅鴉でござんす | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 冬島泰三監督の『旅鴉でござんす』は、名和宏が主演。王道の日活股旅モノといった展開で、長めの相撲シーンは見もの。弘松三郎や水木京一、河上信夫など日活の脇役陣が随所に登場してうれしかったけれど、南寿美子ファンとしては、お歯黒が美しさを台無しにしていて残念でした。榎木兵衛が、あまり強くない用心棒役で登場するのもポイント。

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彼を殺すな | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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1月 『明日また生きる』『娘の人生案内』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

明日また生きる | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 新年の1本目は、『明日また生きる』をお届け。血のつながりがないことが判明した兄と妹の歪な愛の物語を描いた、掘り出し物の映画です。メロドラマで不治の病があり、兄妹の血縁問題があり…ありふれたエピソードが盛り込まれていて、従来の作品ならばお涙ちょうだいといったところですが、本作は現代的なアレンジを加えて描かれています。物語がドライなテイストに仕上がっていて、実に見ごたえがありました。
 圧倒的な存在感を示したのは妹のまきを演じた栗原小巻。彼女の主演作『愛と死』(71)は、24年の名画座映画の個人的ベスト1だったこともあり、今作を観て改めて栗原小巻と松竹映画の相性の良さを感じました。僕もすっかり〝コマキスト〟です。
 さらに松村禎三の音楽も素晴らしい。特に劇中何度も繰り返されていたギターとハープとソプラノの歌声と時々プリペアドピアノも入った音楽は、透明感があり秀逸でした。
 鈴木達夫の撮影も見事。個人的に、70年代前半の日本映画はクリアな光を捉えた独特の色彩を放つように感じていて、本作ではその色合いをとことん堪能できました。当時の広告で「モーレツからビューティフルへ」というキャッチフレーズが流行りましたが、まさに〝ビューティフル〟という言葉がぴったり。淡くて澄んだ色彩に魅了された一方、ところどころ映しだされる渋谷や新宿や四谷など、大きく変貌を遂げた東京の風景には驚きを隠せません。
 また、俳優座が全面的に制作を手掛けているので、栗原小巻をはじめ、まきの兄・勝利役の田中邦衛、その父役の信欣三ら俳優座の名優が総出演しているのもうれしい。勝利の仕事の相棒を演じた河原崎次郎も、刑事役で登場して、当時はライオンの歯磨きのCMで知名度のあった福田豊土も俳優座出身とは知らなかった!唯一俳優座出身ではないキャストは渥美清のみ。彼の登場に、松竹映画の矜持が感じられました。

娘の人生案内 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『娘の人生案内』は、根上淳と南田洋子が共演、田中重雄が監督した青春映画。南田洋子と市川和子らが展開した高校生の演劇会は『桜の園』(90)とオーバーラップして感激しきり。もちろん、物語後半で登場した志村喬はインパクトが強烈。どんな作品も彼が登場すれば名作に格上げされるのだなと再確認しました。

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明日また生きる | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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2025 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

12月 『若い野ばら』『鉄火場仁義』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

若い野ばら | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 12月は、今年3月に亡くなったいしだあゆみさん追悼特集より『若い野ばら』をチョイス。明るく純粋な3人姉妹が、那須高原にオープンさせたドライブインを舞台に青春を謳歌するさまを描いた音楽映画です。
 冒頭、家族4人が食卓を囲んで会話を交わすシーンで、セリフを言う人がひとりずつ真正面のカットで映されているのを見て「おや?」と思った方は、続いて流れてくるタイトルロールを見て答え合わせができるはず。撮影はなんと厚田雄春です。厚田雄春といえば小津安二郎組のキャメラマンで、人物がしゃべるときは正面向きのカットで捉えることで知られています。その小津調のキャメラワークが拝めるのです。
 しかも、物語が進んでドライブインのシーンになると、今度は小津映画では絶対にできなかっただろう俯瞰のアングルを多用。さらにミュージカルシーンでは再び正面からのカットが入ります。ここで疑問が浮かびました。「もしかして厚田さんはミュージカル映画を撮るのは初めてなのでは?」と。そう感じてからは、ベテランならではの撮り方と対極の初々しい撮影が楽しく、キャメラワークにくぎ付けになりました。
 藤田敏雄といずみたくのコンビによる原案も興味深く感じましたが、今作で使われている曲の中にヒット曲がないのもレアです。当時の歌謡映画はヒット曲に当て込んで作る作品がほとんどだったので、その点においても異質な印象を受けました。
 もちろん、いしだあゆみと中村晃子の歌とダンスのシーンも見ごたえあり。ラストで清水まゆみも4小節だけ歌って踊る場面があり、得した気分も味わえます。さらに、佐野周二や中村是好、早川保、三上真一郎、田中邦衛といった脇役陣も豪華。加えてDJの間でニッチな人気となっているキューティーQの出演も貴重です。ただ、尾藤イサオとフランツ・フリーデルが出演しながら歌うシーンがなかったこと、そしてモノクロ映画だったことが至極残念!

鉄火場仁義 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『鉄火場仁義』は、高橋英樹が男の意地を見せる遊侠アクションです。主人公の高橋英樹がハンサムで、ヒロインの和泉雅子は可憐。滝沢修もいい味を出していますが、ストーリー展開の新鮮味がなく、ありふれた任侠モノという印象は拭えず。芦田伸介が組の親分ではなく壺振り役という観点でいえばある意味珍品かも。

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若い野ばら | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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11月 『俺が裁くんだ』『螢草』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

俺が裁くんだ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 11月は、名画座ファンの間で話題となっていた『俺が裁くんだ』を放送。新東宝が製作したものの、同社の業務停止によりお蔵入りとなり、その後日活が買い取って公開した幻の作品で、とにかくこれほどの傑作が埋もれていたことに驚いています。
 兄を殺した犯人への復讐を誓う弟・五郎を熱演するのは松原緑郎。特に新東宝時代の彼は、鬱屈していてギラギラとした青年の役が非常によく似合う印象があって、当時の彼の出演作で大好きな映画は数知れず。そんな松原緑郎が絶頂期のさなかで魅力を余すところなく詰め込んだような役どころを演じていて、実に見ごたえがありました。
 そして、五郎の復讐の標的となる興津を演じるのは天知茂。ニヒルな男の真骨頂ともいうべき役柄で、なおかつスマートさも兼ね備えていて最高でした。血気盛んな松原緑郎と妖しく輝く天知茂のコントラストがとにかく見事で、ふたりとも本作が新東宝時代の代表作といえるのでは。
さらに、麻薬密輸団のドンを演じる富田仲次郎と、人情刑事役の殿山泰司といったバイプレーヤーたちもいい味を出していて、ヒロインの星輝美も実にチャーミング。撮影も素晴らしく、のちの鈴木清順や舛田利雄ら日活の黄金期を担った監督たちの作品を彷彿とさせるシャープな場面もたくさんあり、感激しきりの84分間でした。
 本作のメガホンをとった橋田壽久年監督は、新東宝で小森白監督作品の助監督にクレジットされていることが多く、監督を務めた作品は本作ともう1本のみのよう。新東宝解散以降の足取りも不明という無名監督の撮った映画とは信じられないほどクオリティーの高い作品でしたが、脚本のクレジットに渡辺祐介監督の名前があって、なるほど手堅い映画であるはずだと納得。ストーリーはご都合主義の展開で、思わずツッコみたくなるところが多々あったものの、それを許せるのも素晴らしい映画である証拠です。

螢草 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『螢草』は、魔の病原体の研究に挑むふたりの医学者の対立と、彼らを愛する3人の女性の宿命を描いた、佐々木啓祐監督作品。大木実、菅佐原英一、三島耕、島崎雪子など、大好きな俳優陣が大勢出演していて期待したのですが、監督の演出力に難ありでした。大木実は期待にたがわぬ誠実なキャラクターでしたが。

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俺が裁くんだ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

螢草 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

10月 『太陽西から昇る』『白い南風』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

太陽西から昇る 夏祭り三度笠 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 10月は、浅丘ルリ子と長谷川明男が共演した『太陽西から昇る』を放送。ゆがんだ青春を送る2人の男女を通して、若者の生活とモラルを描く、江崎実生監督の異色作です。
 江崎監督の作品は当たりはずれがあり、意欲作も多い一方で、期待して観にいくとことごとく裏切られてしまうこともしばしば。アングルや撮り方にこだわりすぎてかえって失敗しているなと感じる作品も少なくない気がします。そういえば、江崎監督と浅丘ルリ子がタッグを組んだ『華やかな女豹』(69)も、ルリ子さまがファッションモデルのようにかっこよく登場するのですが、失礼ながら凡庸な作品でした。本作もケレン味のある場面が出てくるたびに、技に頼るあたりが名作になれなかったゆえんだなと思ってしまった…。
 そんな江崎監督の作品ですが、成城にあった石原裕次郎邸がロケで使われているのは見もの。そのせいか、ストーリーも石原慎太郎が書いたように感じられ、虚無的な浩を演じる長谷川明男もふとした表情が裕次郎とオーバーラップする気がして、むしろ裕次郎がこの役を演じたらバッチリだったのではないかと感じました。でも、当時の裕次郎は青春スターを演じるには年を取っていたし、川地民夫もしかり。いっそのこと、浩の友人の役で出演していた中尾彬が主演でよかったのではないかとも思いましたが、やっぱり劇中で彼が死ぬシーンは外せないなと、あれやこれやと思いをめぐらせてしまいました。とにかく中尾彬の存在感が圧倒的で、本作は映画俳優時代の彼の代表作のひとつと言っても過言ではないかと。中尾彬ファンは必見です。
 クライマックスで、草薙幸二郎演じる竜二を浩が追い詰めるシーンも見ごたえあり。草薙幸二郎の迫真の芝居に引きこまれます。また、劇中に何度もかかるウエストライナーズの音楽も最高! 劇伴のレコードをぜひ探したいものです。

白い南風 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 生駒千里監督の『白い南風』は、三田村(山下洵二)に思いを寄せながらも、強引な小柴(佐藤慶)と一夜を共にしてしまったことから苦悩する美仁子(池内淳子)の姿を描いたメロドラマ。バッドエンドが印象的で、成瀬巳喜男が撮ったら最高だろうなという思いがよぎりました。そんな本作の見どころは佐藤慶演じる小柴のクズ男っぷり。元祖サイコパス俳優・佐藤慶ここにあり!

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太陽西から昇る | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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9月 『木曽路の決闘 夏祭り三度笠』『夜の挑戦者』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

木曽路の決闘 夏祭り三度笠 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 9月は、島田正吾と山田五十鈴が共演した「木曽路の決闘 夏祭り三度笠」を放送。木曽川の急流を背景に、筏師の新三が悪の渦に巻き込まれながらも、恋人のおみよと母のおしげに支えられて立ち直る姿を描いた、丸根賛太郎監督作品です。
 主役の新三を演じた島田正吾は、のちに任侠映画に脇役で出演して、いい味を出していた渋い俳優という印象がありました。そんな彼の若い時分の芝居を観たのは初めてで、劇中で甲高い叫び声を時折発してびっくり。彼の舞台での持ちネタなのかもしれませんが、後年のイメージとあまりに異なり意表をつかれました。
島田正吾の相手役を務めた山田五十鈴は、新三の恋人と江戸の酌婦の二役で魅了。先日、対談した女優の橋本愛さんから、時代劇で所作が美しく見えるように日本舞踊を習っていると聞いた直後に本作を鑑賞したので、山田五十鈴の色気はもちろん、うちわのあおぎ方など所作の美しさにも敬服しました。
 また、筏師の兄貴分を演じた石山健二郎といえば、「白い巨塔」(66)で田宮二郎が演じた財前を関西弁で威圧する義父役!本作でもパッと見て悪者と匂わせる悪人風情が最高です。そのほか、黒川彌太郎や荒木忍、月形龍之介など、大好きな俳優が大勢出演していて期待しましたが、肝心のストーリー展開が冗長で物足りなさは否めず。しかも、監督は名作『春秋一刀流』(39)を手がけた丸根監督なのに、その手腕が発揮されなかったのは、映画の制作が新国劇主導だったからなのか、丸根監督の脚本ではなかったからなのか…。夏祭りや物干し台から見る花火の場面と日本映画ならではのシチュエーションがそろっていて、木曽川の筏下りも見ごたえがあったのに生かしきれなかったのは残念ですが、こんな映画経験も旧作探訪の醍醐味です。

夜の挑戦者 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 野口博志監督の『夜の挑戦者』は、横浜の暗黒街を支配する国際密輸団長を、影の男と熱血刑事が倒すアクション。主演の長門裕之が、当時のイギリスのロックンロール映画でよく見るテディボーイファッションで決めていてかっこいいなと思っていたら、役どころがイギリス留学から帰ってきた若者という設定で納得。一方、相棒の葉山良二はドジな刑事で失笑してしまうのだけれど、横浜を舞台に展開するバディものアクションという意味では『あぶない刑事』の習作といえる作品かも!?

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木曽路の決闘 夏祭り三度笠 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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8月 『小さな花の物語』『復讐は誰がやる』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

小さな花の物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 8月は、瑳峨三智子、桑野みゆき、川津祐介、朝丘雪路が顔を合わせた『小さな花の物語』を放送。苦難の短い生涯を送った母の「野の花のように強く生きなさい」という言葉を胸に、世の荒波にもまれながら幸福を見出していく女性の物語を、川頭義郎監督が丁寧に描いた名作です。
 最大の魅力は、物語前半の主人公で、不幸な境遇にあり病にも苦しめられる八重を演じた瑳峨三智子と、物語後半のキーパーソンで、料亭の女中頭・トメを演じた朝丘雪路の好対照なセリフ回し。ふたりともささやくように言葉を紡いでいるのですが、瑳峨三智子は一貫しておとなしめのトーンで彼女独特の物憂げな感じの話し方が心地よく、一方で朝丘雪路はリズミカルなしゃべり口が彼女の華やかさにも合っていてすっかり惹きこまれました。
 個人的に感激したのは、溝口健二監督の『赤線地帯』(56)など、人間の酷薄な部分を描く脚本家というイメージのあった成沢昌茂が、やさしさをもって人間模様を捉えた脚本をこしらえたという意外性。さらに、余韻を残す川頭監督の〝引き〟のカメラワークも印象的です。前半のクライマックスで病身の八重が命も残りわずかとなったときに娘を抱き寄せたと思ったら、カメラが引いていって部屋中に飾られた千羽鶴が映るというシーンは、師匠である木下惠介監督を超えたのではないかとさえ思いました。
 ささやき声で聞かせるセリフばかりの、決して派手ではない物語ですが、実に成熟した上質な作品に仕上げた川頭監督の手腕がとにかく光っている本作。「自分で小さな花を咲かせられる人になってな」と幼い娘に言い聞かせる瑳峨三智子のセリフが胸にしみます。

復讐は誰がやる | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 野口博志監督の『復讐は誰がやる』は、サーカスの世界が舞台の異色スリラー。水島道太郎と三橋達也がW主演ですが、残念ながら両雄ともに立たず。ただ、水島道太郎は、後輩を〝さん〟付けで呼ぶ紳士な役がよく似合うなと感心しました。名画座ファンなら、『七人の刑事 終着駅の女』(68)などで刑事役を好演した美川陽一郎の悪役姿も見もの。

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小さな花の物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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7月 『恋と出世に強くなれ』『汚れた顔』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

恋と出世に強くなれ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 7月は、吉田輝雄と寺島達夫がW主演した『恋と出世に強くなれ』をピックアップ。さわやかなスポーツマンの大学生コンビが就職戦線を突破し、持ち前の図々しさとスタミナを武器にサラリーマンとして活躍する、酒井欣也監督作品です。
 実は、3年前にシネマヴェーラ渋谷で「吉田輝雄 ハンサムイヤーズ」という特集が組まれた際、上映作品を選んだ日本映画史研究家の下村健さんによると、本作もラインナップしようとしたものの、フィルムが劣化していて映写機にかけられない状態だったそう。そんなレアものの今作は、名画座ファンの期待を裏切らない、実に魅力たっぷりの映画です。
 吉田輝雄と寺島達夫といえば、新東宝時代は菅原文太と高宮敬二とともにその長身を生かして〝ハンサムタワーズ〟として売り出されました。そんなふたりの共演はもちろん見どころのひとつで、特に、ふたりが母親と赤ん坊に扮して寸劇を展開するサービスシーンは最高でした。
 また、寺島達夫が心から見せているような笑顔をたたえていたのも個人的に印象に残っています。というのも彼は元野球選手で、そのせいなのか映画スタアであることがどこか恥ずかしいのかなと思わせる表情を浮かべることもしばしばでした。とりわけ、松竹入社後のメロドラマはそれが顕著に感じられたので、本作で彼のはじけるような笑顔を見られたのは大収穫です。吉田輝雄とのコンビで、しかも自分の強みである運動神経を前面に出せる役どころというのもプラスに働いたのかもしれません。欲を言うなら、柔道家役で背負い投げではなく、野球選手役で白球を投げてほしかった!
さらに、桑野みゆきや三上真一郎に加えて高峰三枝子といった松竹の大物俳優に、古今亭志ん朝やアチャコ、由利徹、柳家金語楼といった落語家やコメディアンの登場もにぎやか。また、吉田輝雄が演じる宇佐美の義弟役で妙味を醸しだしている福岡正剛の顔と名前がようやく一致できたのも、個人的には大満足です!

汚れた顔 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 森永健次郎監督の『汚れた顔』は、汚職と殺人を操る仮面の紳士にひとりの男が挑む、青山恭二主演のアクション作品。主題歌を歌う春日八郎が劇中1曲も歌わず、芝居に徹しているのがレア。ショートプログラム作品で、あっという間に終わってしまうので瞬き厳禁です。

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6月 『日日の背信』『勝敗』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

日日の背信 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 6月は、中村登監督がメガホンをとった大傑作『日日の背信』をピックアップ。病身の妻への背徳に苦しみながらも恋に身を焦がす男と、日陰の人生を送ってきたために愛情を求めてあがく情熱の女の愛の行方を描いたメロドラマ大作です。
 とにかくほれぼれしたのは、背信の男・土居を演じる佐田啓二の完璧な二枚目ぶりと、富豪の妾・幾子を演じる岡田茉莉子の圧巻の美貌。特に岡田茉莉子はすべてのシーンで色香あふれる美しさをたたえ、衣装替えも多く、艶っぽい声も最高でした。独善的な解釈ですが、松竹映画は家族の姿を描き続けた小津安二郎監督からのラインと、人間模様を社会風刺とともにシニカルに描いた渋谷実からのラインという大きな2本線があり、中村監督はその両方を受け継いだ監督で、作品によってテイストが極端な印象があります。本作はそのどちらの方向性で攻めるのかという点も、ワクワクしながら鑑賞しました。というのも、けっきょくは土居も身勝手な男で、物語も理不尽極まりない展開の連続、今日ではすべての出来事が大炎上案件だとさえ思うのですが、主演ふたりの非の打ちどころのない美しさには説得力があり、感動の一作として仕上げられている。これぞ映画の詐術にしてメロドラマの美学、と感心しました。
 また、伊藤雄之助に桂木洋子、沢村貞子や浦辺粂子といった脇を固めるバイプレーヤーたちも文句なし。さらに、有楽町にあった三信ビル内のたばこ屋で幾子が働くという設定も、名画座ファンなら岡田茉莉子主演の吉田喜重監督作品『秋津温泉』(62)が思い出されるはず。共演の長門裕之がたばこを買ったのも、三信ビルの売店でした。
 それにしても、こんな名作がずっと埋もれたままだったことには驚きを隠せません。この先も眠っている傑作が発掘されることを願うばかり。

勝敗 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 佐伯幸三監督の『勝敗』は、菅原謙二が柔道四段の大学生・順一に扮し、若尾文子が彼を慕うバスガールの恵子を演じる恋愛柔道映画。実直な青年を地で行くような菅原謙二の柔道シーンはもちろん見どころですが、順一の祖母役の北林谷榮と継母の村瀬幸子が並んで語るシーンも注目。実年齢では村瀬幸子の方が年上と知って、改めて日本一のおばあちゃん女優の見事な老け芝居に感激!

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5月 『天使と野郎ども』『アベック・パトロール 赤い鍵』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

天使と野郎ども | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 5月は、松尾昭典監督の『天使と野郎ども』を放送。縄張り争いが続く暗黒の世界で生きる兄弟が、天使のような女性と出会い、足を洗うために奔走するアクション作品です。
 任侠の世界にあこがれる主人公のチンピラ・健児を演じるのは和田浩治。当時18歳ながら日活に入社して3年が経っている和田さんはまだあどけなさが残っていて、弟役が似合います。一方、赤木組のリーダー格であり健児の尊敬する兄・義雄役で登場する葉山良二は、十分すぎる貫録を発揮。そんな兄弟ふたりの心を奪う看護師の妙子を好演する笹森玲子もまさに天使のように美しい。
 物語はその3人を中心に展開しますが、メインの3人を差し置いて強烈な印象を残したのは悪役コンビで登場する信欣三と井上昭文。特に、西部警察のゲンさん(役名・浜源太郎)のイメージが強い井上さんが、こんなに悪い役をやっていたとは驚きました。また、信欣三を筆頭に宇野重吉や大森義夫など、劇団民藝をはじめとする新劇の劇団に所属する名バイプレーヤーも要注目。日活映画らしさを醸しだしているのは彼らの存在なのだなと実感できるはず。
 さらにロケ地となった群馬県前橋市の往時の景色も目を奪われました。とりわけ「日本赤十字社群馬支部病院」の外観は見もの。クライマックスシーンで登場する四角錐の吹き抜けの手術室も、緊迫のストーリー展開より、すばらしい空間に目が釘付けになってしまった!いまはほとんど失われてしまった昭和初期の建物がいかに美しかったかを発見できるのも、旧作映画の見どころです。

アベック・パトロール 赤い鍵 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『アベック・パトロール 赤い鍵』は、安田公義監督作品。殺人犯に間違えられて逃亡する兄・晋吾(藤田進)の無実を信じて捜査する婦人警官の妹・みち子(関千恵子)が、タッグを組む男性警官の三村(堀雄二)とともに怪人物を追うという物語です。とにかく今作のポイントは、真犯人役の菅井一郎の肉体美。菅井さんが老父を演じた小津安二郎監督の『麦秋』が公開されたのもなんと今作と同年の1951年。そんな菅井さんが、これほど体を鍛えていたとは衝撃です!!

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アベック・パトロール 赤い鍵 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

4月 『若い爪あと』『新風』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

若い爪あと | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 4月は、中島義次監督の『若い爪あと』を放送します。主人公の女子中学生・明子を演じるのは、当時日活でアイドル的な人気を博した和泉雅子。モスクワ映画祭で金賞を受賞した代表作『非行少女』の前年にこんな主演作があったとは、という発見もうれしい本作ですが、最大の見どころはずらっと並ぶ刑事役の面々。青山恭二以下、宮崎準、上野山功一、長弘、木島一郎など、日活映画の最高のバイプレーヤーが勢ぞろいしています。個人的なポイントは、捜査主任役で登場する井上昭文。テレビドラマ『西部警察』をリアルタイムで楽しんでいた世代なので、ゲンさん(役名・浜源太郎)とオーバーラップして感激しました。また、取調室にいた制服姿の警官役で中尾彬が登場するのも見逃せない。
 ところで、本コラムでは物語についてさらっと触れるのが通常ですが、今作は見進めるうちに、「こんな展開になるのか!」と意表を突かれたので、あえてここでは物語の内容には触れずにおきます。ただ、波多野憲が演じる歯科医にヒロインの明子が淡い恋心を寄せるのですが、彼が好青年のままであるはずがないという推察は案の定的中したということだけ伝えておきましょう。やはり彼はクセのある役がうまい!
 それにしても、主演の和泉雅子といえば、鈴木清順監督が「今まで撮った女優の中で誰が一番きれいだったか?」と聞かれると、「和泉雅子」と即答したという逸話の持ち主ですが、後年北極へ行く冒険家としての彼女の姿が強烈に記憶されている方も多いはず。そのギャップも含めた彼女の魅力と、最強のバイプレーヤーたちの豪華共演が堪能できる、日活ファン必見の作品です。

新風 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『新風』は、復員兵の息子と軍国主義の父親の意見の対立や、女性教師と封建的な校長との衝突を描きつつ、戦後の新時代にスポットを当てた高峰三枝子の主演作品。一番の見どころはさわやかで鷹揚とした復員軍人を好演した安部徹。のちに日活映画などで凄みを見せる彼にもこんなフレッシュな時代があったのかとうれしくなりました。ニコッと笑ったときに見える歯並びの美しさも最高!

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若い爪あと | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

新風 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

3月 『落日の血闘』『美男天狗黨』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

落日の血闘 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 3月は、アクション映画を得意とする野口博志監督が初めて手がけた時代劇の快作『落日の血闘』をピックアップ。舞台は、街道沿いの宿場町。乱暴狼藉をはたらく悪の一味に決闘を挑むひとりの男にスポットを当てた坂東好太郎の主演作品です。
 街を荒らすならず者たちにたった一人で立ち向かう、西部劇の設定を時代劇に翻案したかのような本作。いくつもの番傘が広がる寺の境内で、植村謙二郎演じる悪党の銀次が踊り子の娘を手籠めにするというアバンタイトルから目を奪われました。そのシーンをはじめ、随所に感じられたのは助監督であり脚本も担った鈴木清太郎(清順)らしいケレン味。セリフではなく演出的なアイデアを彼がたくさん出していたのではないかと楽しい想像が膨らみます。
 脇を固めるキャストも、雪岡純(恵介)や弘松巖(三郎)、深江喜章(章喜)など、後年の日活青春アクション映画で大活躍する名バイプレーヤーが勢ぞろい。築地小劇場出身の汐見洋や老け役の名手・左卜全も出演していて実に見ごたえがあります。特に最高だったのは植村謙二郎です。彼こそ日本のジョン・キャラダイン!西部劇のような時代劇を作るために悪党の彼は欠かせなかっただろうし、鈴木清順好みの俳優だったのだろうと確信しました。
 また、佐藤勝が黒澤明の映画に書いたかのような仁木他喜雄の音楽も素晴らしく、ストーリー展開もどこか黒澤映画の名作『用心棒』(61)が想起されたのですが、本作のほうが『用心棒』より先に制作されたとのこと。名画座ファンにはうれしい掘り出し物の大珍品です。

美男天狗黨 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『美男天狗黨』は、幕末天狗党の蜂起をテーマに、男の友情と恋のロマンを描いた北上弥太郎主演の時代劇。後年『異常性愛記録ハレンチ』(69)で変態を怪演する若杉英二が美男子を演じ、三井弘次や雪代敬子、北竜二、香川良介など素晴らしいキャストが出演していますが、時代劇としても恋愛映画としても少々間延びしている印象が拭えません。一方、ヒロインの藤乃高子が男性陣と接近したあとの切り返しのアップは、目線がズレていて逆に惹きつけられる!

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落日の血闘 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

美男天狗黨 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

2月 『Zの戦慄』『だから言ったじゃないの』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

Zの戦慄 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 2月は、神出鬼没の密輸団〝赤いZ〟と神戸水上警察署の攻防を中心に、密輸団の内部抗争やグループの首領・津島と生き別れた妹の再会劇などを描いた現代劇『Zの戦慄』を放送。『狐の呉れた赤ん坊』(45)など阪東妻三郎主演の名作時代劇を手がけた印象が強い丸根賛太郎監督と、『旗本退屈男シリーズ』をはじめ時代劇スタアとして華々しく活躍した市川右太衛門のコンビなら時代劇が観たかったという印象はぬぐえませんが、そのふたりが終戦直後に挑んだ意欲的な現代劇という点では確実にレアものです。
 タイトルバックには、神戸市警察局や神戸市水上警察署をはじめ、神戸港周辺の役所や企業の名前が列記されていて、港町・神戸をあげて敢行されたロケによる撮影シーンは見ごたえ十分! さらに主演の右太衛門をはじめ、戦前戦後の映画スターが入り混じる絶妙なキャスティングも見どころです。個人的には、戦前に二枚目俳優として活躍し、戦後はダンディーな紳士役を演じることの多かった高田稔が、本作では悪役を演じたのが最高でした。高田さんは小津安二郎の『朗かに歩め』(30)で与太者を演じていましたが、のちに改心するという役どころだったので、ここまで完全に悪役に徹しているのはかなり貴重かと。
 また、ドイツ映画やアメリカ映画、フランス映画のちょっとしたシーンを組み込んだような演出も印象的。クラーク・ゲーブルのような河津清三郎やチャップリンのような見明凡太郎も見ものです。女優陣も、婦人警官姿の月丘夢路が凛々しく、市川春代ファンとしては酒場のマダム役で彼女が大活躍していたのも感激しました。衝撃だったのは原健作(健策)。痩せていてクレジットを見るまでその存在に気づかなかった! そして名画座フリークなら伊達三郎の登場はセリフがなくともうれしい。

だから言ったじゃないの | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『だから言ったじゃないの』は、松山恵子の同名ヒットソングを映画化したショートプログラム。SPレコードの時代もタイアップした映画が作られていたのかと驚きました。後年マイホームパパ役で人気を博す安井昌二のアクションシーンも貴重。

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Zの戦慄 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

だから言ったじゃないの | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

1月 『佐渡ガ島悲歌』『雨に咲く花』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

佐渡ガ島悲歌 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 1月は、安田公義監督の『佐渡ガ島悲歌』をピックアップ。佐渡ヶ島を舞台に、藤田泰子と根上淳が演じる若いふたりの悲恋を描く歌謡ロマンス映画です。佐渡ヶ島の港やお祭り、花火、海など、十分に島のアピールをしている観光映画としてパーフェクトな作品でありながら、文芸作品としてしっかり仕上げるあたりは安田監督の手腕が光ります。
主役の学生・立花真琴を演じたのは、当時29歳ながら凛々しい学ラン姿を披露した根上淳。ヒロインの椎名文代を演じる藤田泰子は初めて観る女優かと思いましたが、吉村公三郎監督の『偽れる盛装』に出ていたことを思い出しました。
主演ふたりを差し置いて、個人的に注目したのは文代の兄・吾郎を演じた春日俊次。以前からサックス奏者で文筆家の菊地成孔サンに似ているなと思っていた俳優ですが、東映はじめ各社の映画でチンピラや悪徳刑事、新聞記者などを演じていた印象があり、こんな大役もないな、と感激。現在観ることが可能な作品の中でもかなり古い出演作であり、この名バイプレイヤーのファンなら絶対見逃せない作品です。
また、文代の祖父・浩平を演じた清水元も必見。頑固爺さん役がハマっていましたが、この当時45歳だったと知って驚いたのなんの。
名画座ファンなら、ばあやを演じた田中筆子の出演もうれしい。でも、彼女も当時39歳とのこと!衝撃が走りました。
控えめなようで饒舌な音楽の使い方も好印象。生き別れた文代の母を演じる三宅邦子が、娘と再会して言葉に詰まり、思わず涙ぐむシーンでハープがポロンと音を奏でたのが特に心に残っています。ハイキングの場面で、居合わせた女学生がおもむろに合唱をするのも最高です。

雨に咲く花 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『雨に咲く花』は、父の無実の罪に泣く娘と、彼女を助けるために立ち上がった若者の淡い恋を、井上ひろしのヒット曲にのせて描く、中島義次監督の歌謡活劇。川地民夫、郷鍈治、井上ひろし、市村博が勢ぞろいする冒頭シーンは見ごたえあり。ロケによって映し出された、失われたかつての東京の風景も貴重です。

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佐渡ガ島悲歌 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

雨に咲く花 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

2024 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

12月 『しのび逢い』『音楽二十の扉』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

しのび逢い | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 12月は、名画座フリーク必見の掘り出し物、酒井辰雄監督の『しのび逢い』を放送します。平和な家庭の夫婦の間に波紋を投げたひとりの女をめぐって、女の生き方、夫婦の在り方、そして愛の形を、哀愁を込めて描いた大傑作です。
松竹のメロドラマの巨匠である大庭秀雄マナーにのっとったような抑制のきいた、端正な名作という印象の今作。最大の見どころは何といっても、佐田啓二に桑野みゆき、そして淡路恵子という豪華キャストの共演です。その3人で展開するギミックなどもまったくない王道の松竹メロドラマは圧巻のひと言でした。
特に感動したのは、中国からの引揚者でホステスとなる愛子を演じる桑野みゆき。彼女の魅力が前面に押し出されていて、ここまでストレートに戦後の影を映し出した松竹映画は珍しく、それも新鮮に映りました。
さらに、ただの主婦ではない、影を感じさせる淡路恵子も絶妙で、佐田啓二も王道のメロドラマで女性に振り回される役どころが実にうまい。加えて本コラムの常連・北上弥太朗が時代劇を離れて現代劇となると、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場するようなユーモアあふれるキャラクターになることに驚きました。また、隙間風の吹く夫婦にお節介しか焼かない隣人を演じた清川虹子が、禁断の愛に落ちた2人を縁日で目撃する予想通りの展開も最高です。
最近読んだ吉行淳之介の小説『夜の噂』もそうですが、戦後のサラリーマンとクラブのホステスが登場する作品は実に粋だなと感心するばかり。昭和は遠くなりにけりというもの悲しさも胸に沁みます。

音楽二十の扉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『音楽二十の扉』は、当時ラジオで人気のクイズ番組『二十の扉』を映画化した、三遊亭歌笑の主演作品。渥美清主演の『おかしな奴』で、渥美清が「破壊された顔の所有者」という口上で始まる三遊亭歌笑を演じましたが、本物の歌笑を見たら渥美清がなんてきれいな顔なのだろうと思うくらい、歌笑の〝破壊された顔〟はインパクトが強烈。また当時の流行歌のオンパレードも見ごたえあり!資料的に価値の高い珍品です。

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しのび逢い | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

音楽二十の扉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

11月 『顔を貸せ』『死美人事件』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

顔を貸せ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 11月は、湯浅浪男監督の『顔を貸せ』をピックアップ。東京と大阪の不良女子グループが激突したのちに団結し、悪の組織に体当たりで挑むさまを描いた作品です。
主演の高宮敬二といえば、新東宝時代に吉田輝雄や菅原文太、寺島達夫とともに〝ハンサムタワーズ〟として人気を馳せたことで知られます。一方で、湯浅監督が手掛けた『血と掟』(65)に主演した安藤昇を松竹に紹介したのも高宮さんだそう。いわばプロデューサー的な役割を果たしたわけですが、〝ハンサムタワーズ〟の中ではなぜか爆発的な人気に至りませんでした。そのわけがこの映画を見てわかった気がします。ただ、高宮さん以上に、文太さんがろくでもない役で登場するのも衝撃。
今作は配給こそ松竹ですが、製作は松竹の子会社で、『血と掟』と安藤昇作品を作った製作プロダクションのCAGが担っています。そのためか、作中にはメジャー作品では味わえない奇妙な雰囲気が充満していて、画質は当時作られていた低予算のピンク映画に近いものを感じました。ハチャメチャなストーリー展開には閉口したものの、ある意味池玲子や杉本美樹が主演する「女番長」シリーズの原点のような映画として位置づけてもいいかもしれません。
また、不良女子グループのリーダーを演じる清水まゆみや初名美香の出演もうれしいのですが、チンピラ役の小高まさるや因縁をつけて金を巻き上げる〝ヤサぐれ〟を演じた荒井千津子など、映画の黄金時代の裏街道を走っていたような人たちの出演は、名画座フリークの心をくすぐるはず。個人的には、松岡きっこが美しすぎて、彼女が映るとイタリアのホラー映画のワンシーンを見ているかのようで大興奮しました。

死美人事件 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『死美人事件』は、黒岩涙香の探偵小説をもとに小石栄一監督がメガホンを取ったサスペンス映画。主演の月形龍之介と、対峙する江川宇礼雄の強烈な化かしあいに始まり、刑執行3秒前の大どんでん返しなど、途方もない突っ込みどころが満載です。痩せている時代の小林桂樹、美形極まりないのだけれどセリフのない船越英二の登場もうれしい限りで、月形龍之介の〝姿三四郎〟ばりのアクションも見もの。横山やすし主演の『唐獅子株式会社』(83)を想起させる水攻めの場面も必見!

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顔を貸せ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

死美人事件 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

10月 『なんとなく、クリスタル』『ペエスケ ガタピシ物語』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

今回は、衛星劇場の「ちょいレア」映画を視聴! | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

なんとなく、クリスタル | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 10月は、クリスタル族という流行語も生んだ、田中康夫のベストセラー小説を映画化した『なんとなく、クリスタル』を放送。気分次第でなんとなく毎日を過ごす都会の若者たちの姿を描いた、かとうかずこが映画主演デビューを飾った作品です。
 かとうさんが演じる由利は青山学院大の学生という設定なのですが、公開された1981年当時、僕はちょうど青学に通う大学生でした。作中に映っていた表参道エリアの風景は非常に懐かしく、中でもあるレコードショップは僕が足しげく通っていたお店です。その名もパイド・パイパー・ハウスは南青山の骨董通りにあった伝説的なレコード店で、当時の店長だった長門芳郎さんは、のちに僕がピチカート・ファイヴでデビューしたときにたいへんお世話になった大恩人。そんな長門さんがパイドで接客をしている場面が映っていたのは、うれしいサプライズでした。ちなみに、一浪して青学に合格したときに両親に合格の報告をしたのも、パイドの店内にあった赤電話から。本作を見て、学生時代の思い出があれこれよみがえりました。
 キャストは、由利役のかとうかずこは少々力が発揮しきれていない印象でしたが、彼女の恋人でミュージシャンの淳一を演じた亀井登志夫のカッコよさにはほれぼれ。若かりし益岡徹、蟹江敬三、そして光石研の登場シーンも見どころです。
 鳴り物入りで使用された劇中の挿入歌も話題となった本作。日本映画で初めて既存の人気の洋楽を使用し、その使用料に映画製作費の多くが占めたことは物議を醸しました。
 たしかに、音楽を全面に出すのは映画として斬新だなとは思ったものの、僕が好む音楽とは若干路線が異なっていて、少し違うというのが一番遠く感じるものだなぁと再確認。しかも、その音楽使用料がその後もネックとなり、いまだにパッケージ化も配信もできないのが莫大な音楽使用料のせいと聞いたら、さらに複雑な気持ちになりました。僕に言ってくれれば、商品化に支障が出ないように音楽をすべて差し替えるのに!

ペエスケ ガタピシ物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 『ペエスケ ガタピシ物語』は、園山俊二の人気4コマ漫画『ペエスケ』を映画化した作品。つかこうへいの脚本は過剰なセリフ使いがなく抑え気味で、主演の所ジョージも全編通して引いた演技が光ります。宍戸錠、岡田眞澄、谷啓という往年の名優たちの出演と犬のガタピシの名演も見ものです。さらに、いまや巨匠の久石譲が手掛けた80s風音楽も貴重。

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なんとなく、クリスタル | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

ペエスケ ガタピシ物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

9月 『かげろう』『ある婦人科医の告白』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

かげろう | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 9月は、新藤兼人監督がメガホンを取り、乙羽信子が主演した『かげろう』を放送。瀬戸内海の島で起きた猟奇犯罪を捜査する刑事が、ふたりの女の正体を暴きつつ、島の因習や貧困も描く社会派作品です。
 やはり最大の見ものは、乙羽信子の体当たり演技。『原爆の子』(52)以来、新藤監督には妻がいながら、乙羽さんと愛人関係にあったのは周知の事実ですが、そんなふたりがタッグを組んだ作品での乙羽さんの体を張った演技は毎作趣向が異なり、新藤監督も乙羽さんもそれを楽しんでいるかのように感じられます。今作も、乙羽さん演じるおとよの衝撃的な場面から物語が始まり、「こう来たか!」とうなるはず。
 また、もうひとりの主役ともいうべき刑事を戸浦六宏が演じているのもポイント。60年代の大島渚作品を筆頭にクセのある脇役という印象の強い彼が、メインの役どころで大フィーチャーされている映画は見応え充分です。さらに、後年若松孝二監督作品の常連となる吉沢健を抜擢するあたりは、時代の空気をいち早く読む新藤監督の慧眼に感服したり。ほかにも、草野大悟や観世栄夫、それから黒い犬の名芝居も見事。
 名画座ファンなら、刑事の捜査シーンに、東映の『警視庁物語シリーズ』(56~)や大木実主演の『張込み』(58)など、50年代後半から60年代に作られた刑事モノとの類似性にニヤリとするはず。さらに狭い小道や坂道の多い尾道の街並みは、ジャン・ギャバン主演の『望郷』(37)や石井輝男『黄線地帯』(60)も連想。
 もちろん、脚本家から映画人生をスタートさせた新藤監督ならではのストーリー展開も秀逸。登場人物がひと言言うたびに回想シーンを挟むことによって映画のテンポが作られ、終盤まで事件の犯人がわからないように組み立てる手法はさすがです。それは、一緒に映画を作っていた吉村公三郎や仲間の映画人たちに、「こんな映画のスタイルもあるんだぞ!」と挑発しているかのようで、もちろん僕も、毎作違う手を使う新藤映画にはしてやられっぱなし!

ある婦人科医の告白 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 森一生監督・水戸光子主演の『ある婦人科医の告白』は、堕胎はいかなる場合に許されるのかという問題をめぐって、女の悲しさや切なさを描いた作品。英雄にも悪役にも見える二本柳寛の魅力が何より光っています。また、劇中に描かれる観劇シーンの観客の中に、根上淳を発見したことが個人的には大収穫でした。

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かげろう | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

ある婦人科医の告白 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

8月 『かあさん長生きしてね』『月の出船』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

かあさん長生きしてね | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 8月は、川頭義郎監督の『かあさん長生きしてね』放送。青森県津軽の十三潟湖畔と東京の下町を舞台に、多感な青春の哀歓と親子の愛情を描いた物語です。
 実は今作は、すでに今年2月にシネマヴェーラ渋谷で鑑賞済みなのですが、その際はプリントの劣化が激しい記憶がありました。そんな今作が、最新技術でのスキャンを経て、美しい映像に蘇っています。
 見どころは数えきれないのですが、それは川頭監督ならではの、登場人物全員に対しての細やかで丁寧な演出ゆえ。主役の和夫を演じる勝呂誉と米子を演じる倍賞千恵子の弾ける若さはもちろん、川頭監督の実弟である川津祐介が米子の兄・精一役で出演していたり、和夫の母を演じている田中絹代が津軽の風雅な景色に引き立てられて実に美しく映し出されていたりと、メインの4人だけではなく、伴淳三郎や葵京子らが演じる脇のキャラクターもしっかりと光が当たっているあたりは、さすが川頭監督とうなりました。
 それにしても、倍賞千恵子は貧しい生活を送りながらも健気に働く役柄がやはり似合うなと思いつつ、中村登監督の『暖春』(65)で見せたOL役も妙に色っぽかったことを思い出してあらためて惚れ惚れ。川津祐介といえば、後年、大映映画で見せる怪優ぶりも見事だったなと振り返り、田中絹代は晩年に出演していた名作テレビドラマ「前略おふくろ様」(75)もシンクロしました。
 そんな中、今作でいちばんいいところをかっさらっていったのは、和夫が勤めるクリーニング店に現れた助っ人の大島を演じた佐田啓二です。彼が職人を演じた映画というと木下惠介監督・原節子主演の『お嬢さん乾杯!』(49)での自動車修理工の役が思い出されたものの、スターとなってからの職人役はまた格別で、大島がつっけんどんな男と思わせておいて実は情に厚い二枚目だったというところもズルすぎる!

月の出船 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 森一生監督の『月の出船』は歌手の〝バタヤン〟こと田端義夫のヒット曲を映画化した作品。正直なところ、森監督がこんな凡作を作っていたのかと衝撃を受けたものの、浪曲師の廣澤虎造が大フィーチャーされている点は高評価。また、バタヤンの持つギターが高価でレアものというのも音楽業界では有名なのですが、今作で彼が抱えるギターにも目が釘付けでした。そして先日惜しくも世を去った久我美子を見て涙。

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かあさん長生きしてね | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

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7月 『怪談色ざんげ 狂恋女師匠』『あこがれの練習船』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

怪談色ざんげ 狂恋女師匠 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 7月は夏の風物詩である怪談映画を放送します。『怪談色ざんげ 狂恋女師匠』は、名代の美人で女ざかりの踊りの師匠が死霊となって、彼女をだました好色漢とその仲間の悪党に復讐するという物語。メガホンをとったのはのちにピンク映画に進出する倉橋良介監督です。
 妖艶な美人師匠から恐怖の幽鬼に変貌するおせんを水原真知子が体当たりで演じたものの、少々物足りなさが否めなかった分、それを補って余りある大活躍を見せたのが、宗次郎役の名和宏と、どんどろ坂の仁蔵役の田崎潤というふたりの悪党。名和さんといえばあの任侠映画の大傑作『博奕打ち・総長賭博』(68)など東映作品における強烈な印象が強かったのですが、今作を観て若いころは水もしたたる美男俳優として売り出していたのかと驚かされました。そんな名和さん演じる宗次郎は、悪人になりきれず良心の呵責に苛まれる場面や、怨霊を恐れる人間らしさが垣間見えるシーンもあったのに対し、田崎さんが演じる仁蔵はいいところがひとつも見当たらない!冷酷非道極まりない強烈な悪玉ぶりは、さすが名脇役・田崎潤としびれました。
 また、北上弥太郎と森美樹というふたりの二枚目俳優の共演もポイント。特に早世した森さんの端正なマスクを拝めたのは貴重だなと思いつつ、もう少し出てほしかったなというのが正直なところ。さらに、清水宏監督の『按摩と女』(38)の按摩役など、貧しい生活を送る人物を演じるイメージがある日守新一が豪商役で出演していたのも新鮮で、にぎやかなアチャコ、柳家金語楼、桂小金治といった顔ぶれからは、当時の彼らの人気ぶりがうかがえます。
 ちなみに本作は、名匠・溝口健二監督の『狂恋の女師匠』(26)のリメイクといわれていますが、残念ながら同作のフィルムは現存しないとのこと。残っているのは同作を17歳のときに観て大絶賛したあの淀川長治さんの講評のみで、つくづく本家の作品を観てみたいものです。

あこがれの練習船 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 野村浩将監督の『あこがれの練習船』は、商船学校を舞台に若者の友情と恋を描いた、川口浩主演の青春映画です。見どころは、大海原を航く美しい帆船。そして名画座ファンなら、北原義郎や鶴見丈二の出演はもちろん、いろいろな映画で脇役ながら印象に残る役柄も多い入江洋祐にも注目したい。これほどたっぷりセリフを言う入江さんはレアです。

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怪談色ざんげ 狂恋女師匠 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

あこがれの練習船 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

6月 『情火』『俺は情婦を殺す』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

情火 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 6月は、メロドラマの名手として知られ、近年は名画座ファンの間で再評価が著しい大庭秀雄監督が初めて手がけた時代劇作品『情火』をピックアップ。明治初期に、新政府による急激な改革と、保守的な旧幕府領の人々との間で起きた梅村騒動をモチーフに描いた本作は、時代劇の醍醐味ともいえる勧善懲悪の爽快感はないものの、人々の苦悩や無念といった心理描写が丁寧につづられていて、すっかり引きこまれました。
 主人公の梅村速水を演じた若原雅夫も本作が時代劇初出演。新政府の司政官・梅村速水の現存する写真と瓜二つと評されたことに、公開当時の若原さんは悦に入ったようですが、現代人からするとその髷姿は西郷輝彦にそっくり!意外な発見に衝撃を受けつつも、正義感が強く、実直すぎるあまり、飛騨の人たちの反感を買う梅村役は実にハマり役でした。そんな梅村に立ち向かう合羽屋おらくは、木暮実千代がさすが名女優と言わしめる迫真の芝居を展開。梅村と出会った当初は敵愾心を燃やすものの、彼の誠実さに触れるうちにほだされていくさまもしびれます。
 物語の進展に一役買う、名バイプレーヤーの山村聰と柳永二郎の存在感も秀逸。才覚がありながら世俗を嫌って晴耕雨読に勤しむ梅村の親友・奥田金馬太郎は、博学な俳優の代表格ともいえる山村さんにうってつけで、腹に一物を抱える地役人の吉田文助を演じる柳さんの芸達者ぶりも大いに堪能しました。
 キャスティングの妙が光る大庭監督の傑作ですが、唯一残念だったのは、名画座ファンが愛してやまない大木実の出番が非常に少なかったこと。その代わりというわけではないけれど、おらくといい仲でありながら日和見的な地役人・吉住弘之進を演じる夏川大二郎を存分にお楽しみいただきたい。戦前は青春スターとして活躍した夏川さんがうだつの上がらない役人を見事に演じるさまは、旧作映画ファンの心をくすぐるはず。

俺は情婦を殺す | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 野口博志監督の『俺は情婦を殺す』は、復讐の執念と男の意地がさく裂する、長門裕之主演のショートプログラム。井田探と柳瀬観の共同脚本は粋で小気味よく、何といっても物語の舞台となる渋谷が、昔はこんな街だったのかと、その様変わりぶりに目を見張ります。日活映画の刑事役でよく見る弘松三郎がなかなか大きな役で出演している のもレア。

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情火 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

俺は情婦を殺す | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

5月 『此村大吉』 『出世鳶』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

此村大吉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 5月は、本コーナー初登場となるマキノ雅弘監督の『此村大吉』を放送します。歌舞伎の〝仮名手本忠臣蔵〟五段目で登場する定九郎のモデルの此村大吉の恋と剣の物語を描いた本作。最大の見どころは、主演の鶴田浩二以下、河津清三郎、久慈あさみ、田中春男、森健二、甥の長門裕之と、マキノ監督の名作『次郎長三国志』シリーズを想起させる超豪華な俳優陣です。ただ、松竹に東宝、宝塚、新東宝、東映の名優たちの共演は、瞬きもできないほど素晴らしいキャスティングなのですが、それゆえに収拾がつかなかったのか、本作のストーリー展開には少々不親切な印象を拭えません。
 〝此村大吉〟は講談でおなじみの物語であるものの、当時の作品資料にも「此村大吉を知っている映画大衆は非常に少ないと思われますが、それがかえって未知への魅力ともなり…」と記されており、説明過多な映画に慣れた現代人にはなおさら映画を観ただけでは物語を理解しがたく、名作ぞろいのマキノ映画にしては珍しい失敗作?と、なんとも歯がゆい気持ちになってしまいました。
 とはいうものの、しばらくは何の話が始まったのかつかみにくい奇妙な冒頭の語り口が以前観た何かの作品に似ている、そうか、あれは『次郎長三国志』のシリーズ最終話の『荒神山』、あの作品もまるでフィルムが欠落して途中から始まったかのような展開だったと思い出し、調べてみると『荒神山』は54年7月公開、本作は同年9月とあまり間を置かずに撮られていたと知ると俄然、興味が湧いてきます。すると開巻まもなくの久慈あさみと森健二のやりとりはまるで『次郎長三国志』スピンオフ、さらには大映の伊達三郎と新東宝の沢井三郎が並ぶ眼福。河津清三郎が歌舞伎小屋の1階席から桟敷席の悪漢・徳大寺伸に大声で啖呵を切ってチャンバラが始まる胸のすくような展開にはさすが、と唸ってしまいましたし、極めつきはうるんだ瞳のヒロイン・三田登紀子の典型的なマキノ・ビューティーっぷり、やはりマキノ雅弘はエンタテインメントの名匠でした。

出世鳶 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 大曾根辰夫監督の『出世鳶』は、北上弥太郎と山田五十鈴が共演する時代活劇モノ。劇中に登場するどぶ池や横丁のセットが素晴らしく、何より風が見事に描写され、時代劇の巨匠・大曾根監督の手腕が光ります。個人的には松竹映画の常連・水上令子がなかなかの大役、単独でアップで映ったことに心躍りました。

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此村大吉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

出世鳶 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

4月 『男の歌』 『二つの處女線』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

男の歌 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 4月は、高橋治監督の『男の歌』をピックアップ。腕っぷしの強い男前の青年が、ボクサーとして歩んでいく姿を描いた青春映画の傑作です。
 とにかく主演の吉田輝雄の魅力が爆発している今作は、冒頭のタイトルバックで繰り広げられた乱闘シーンからたちまち惹きつけられました。吉田さん演じる純三が大勢の人を相手に殴っているのですが、実際にはまったく当たっておらず、その動きがまるでバレエのように見えるという素敵なオープニングにはやくも心奪われ、しかも、その場面でボクサーの鉄夫を演じる杉浦直樹とトレーナーの三枝を演じる菅原文太と出会った純三が鉄夫にコテンパンにやられてしまうという導入も秀逸。加えて、純三のチャーミングなキャラクターと、吉田さんの肉体美にも魅了され、ボクシングの試合もたっぷりと描かれていて非常に見ごたえがありました。松竹制作でボクシングが登場する映画というと、戦前に小津安二郎が手がけた『非常線の女』(33)が思い出されますが、同作で三井秀男という芸名でボクシングを習う学生役で出演していた三井弘次が、今作で純三の面倒を見る医師役として登場するというキャスティングも粋。喉にエフェクトが入っているのではないかと言いたくなる三井さんの声は唯一無二ですし、今作を観てあらためて松竹の顔ともいうべき名バイプレーヤーだなと感服しました。
 そして、名画座フリークなら、吉田輝雄と菅原文太に加えて高宮敬二という、新東宝時代にハンサム・タワーズとして人気を博した4人のうち3人が出演しているのがなんといってもうれしい。欲をいえば寺島達夫も松竹に移籍していたのだから出てほしかったけれど、松竹作品でのお三方の共演には感激しきりです!
 高橋監督は後年直木賞作家として名を馳せた印象が強く、正直なところ映画の作風からはもしかして松竹より大映のほうが手腕を発揮できたのではないかと思いますが、今作を観ていたら、劇中のボクシングの試合会場になんと「映画は大映」という広告を発見! 偶然の演出も含めて(笑)、大満足の拾いモノでした。

二つの處女線 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 久松静児監督の『二つの處女線』は、久我美子と根上淳が共演する青春恋愛作品。個人的に、根上さん演じる孝之介が目玉焼きをすすって食べる場面が印象に残っている一方、孝之介の兄・雄之介を演じた大野守保が、デビュー前の若杉英二ではないかという説に衝撃!

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男の歌 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

二つの處女線 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

3月 『夜行列車の女』 『渡世一代』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

夜行列車の女 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 3月は、田中重雄監督の『夜行列車の女』をチョイス。闇夜の鉄路をばく進する夜行列車内で次々と起こる怪事件を大スペクタクルとともに描いた、隠れた傑作です。
 本作が公開されたのは、戦後映画産業が復興してまもない1947年のこと。そのため主人公で国鉄労働組合の代表である幸田を演じる若原雅夫をはじめ、名画座でおなじみの俳優陣の若かりし姿を拝めることにまず感激しました。当時の映画を観ると俳優がみな痩せていて日本人の食糧事情が見てとれるのだけど、若原さんもかなり細面で、一方で話し方や演技のスタイルがすでに完成されているなと確認できたのはファンとして大収穫。さらに幸田の同僚・三木を演じた花布辰雄も大好きな俳優のひとりで、若い時分の彼を見られたのも、またノンクレジットでエキストラ的に登場した日活のバイプレイヤー・高品格の若き日を見られたのもラッキーでした。そんな中で、老医師役の見明凡太郎が安定の老け芝居でニヤリとさせてくれました。
 豪華な配役もさることながら、田中監督をはじめ制作陣も達人揃いで、脚本には名匠・伊藤大輔の名前がクレジット。戦争直後の世相や庶民の姿をしっかりと描きながら、魅せるストーリーを展開するあたりはしびれました。映画中盤で繰り広げられる、走行する列車の屋根の上でのアクションシーンも迫力満点で、これだけでも見ごたえがあるのに、物語終盤には若原さん演じる幸田がインディ・ジョーンズ顔負けの、からだを張った最高のシーンが待っています。ダイナミックな撮影手法も楽しいし、美術ものちに鈴木清順監督作品で手腕を発揮した木村威夫が担当しており、思わぬ拾いモノに大興奮しました。同じく列車モノの『ブレット・トレイン』(22)が不発だったブラッド・ピット主演で、ぜひともリメイクしていただきたい!!

渡世一代 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 斎藤武市監督の『渡世一代』は、〝男の紋章シリーズ〟で人気を博した高橋英樹主演の任侠モノ。梅野泰靖や芦田伸介、弘松三郎、金子信雄ら豪華キャストが出演しており、本作に続いて作られた〝一代〟シリーズ第2弾が鈴木清順監督の名作『刺青一代』(65)と聞くと、名画座ファンはハードルを上げてしまうかもしれないのでご注意あれ…。ただ、高橋さん演じる伊蔵の弟分・銀次を怪演した岸田森は必見。特に、伊蔵にドスで殺される銀次のラストはまるで吸血鬼のようで一見の価値あり。

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行列車の女 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

渡世一代 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

2月 『夜は俺のものだ』 『咲子さんちょっと』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

夜は俺のものだ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 2月は、森園忠監督の『夜は俺のものだ』をピックアップ。事件を起こした凶悪犯4人が町医者の家に立てこもる、緊迫の72時間を描いたサスペンスタッチの短編です。森園監督作品は初鑑賞だったものの、蔵原惟繕監督の『愛と死の記録』(66)などを企画した大塚和が携わった作品は上質のものが多いという印象があり、やはり大塚プロデュース作は期待を裏切らないなと再確認しました。
 今作の見どころは、粒ぞろいの俳優陣。日活スターの沢本忠雄を筆頭に、菅井一郎、東谷暎子、佐野浅夫、草薙幸二郎、高野由美らの共演はうれしい限りで、特に凶悪犯の一味を演じた佐野さんは改めて最高のバイプレーヤーだなと実感しました。しがない刑事役をやったかと思えば今作のように犯人役もこなす、変幻自在の演技力はさすがだし、開襟シャツがこんなに似合う人もいない。佐野さんと同じく劇団民藝所属の草薙さんとのコンビも見ものです。
 また、世界で一番レーニンに似ている菅井一郎が、今作は悪役ではなく、誇り高い医師を熱演していたのも見ごたえがあり、『事件記者』シリーズの刑事部長「ムラチョウさん」でおなじみ宮坂将嘉が、悪の組織のボス役で登場するという意外性も高ポイント。同じく『事件記者』シリーズをはじめ、多くの日活映画に脇役として出演している花村典克が、今作は三原一夫という役者名でクレジットされて出演したのも個人的には収穫でした。
 何気に印象に残っているのは、冒頭に映しだされた、時計がたくさん並んだ貴金属店内の描写。そして、大町文夫や雨宮節子を見て、ひと昔前の日本人はこういう顔つきだったなといううれしさもこみ上げました。

咲子さんちょっと | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 酒井欣也監督の『咲子さんちょっと』は、新妻の咲子さんを江利チエミが演じた人気ホームドラマの劇場版。咲子さんの夫で新進作曲家の京太郎を吉田輝雄が演じています。
 新派から呼んだ伊志井寛や当時人気絶頂の古今亭志ん朝など、豪華キャストが次々と登場するだけで楽しい今作。個人的には新東宝から松竹に移籍したばかりの松原緑郎を拝めたこともポイントです。
 挿入歌の『新妻に捧げる歌』は中村メイコ作詞、神津善行作曲で江利さんの代表曲のひとつ。今作を観た直後に中村さんの訃報に接し、あらためて「昭和も遠くなりにけり」という気持ちになりました。

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夜は俺のものだ | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

咲子さんちょっと | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

1月『花扉』 『絢爛たる殺人』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

花扉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 1月は、田畠恒男監督の『花扉』を放送。戦後の財閥解体で没落した元令嬢と作曲家志望の青年が繰り広げる波乱の恋模様を描く、初名美香の第1回主演作品で、佐々木功や笠智衆ら豪華キャストが登場します。
 今作を観て想起されたのは、鈴木清順監督の『悲愁物語』(77)。鈴木監督といえば『殺しの烙印』(67)が日活上層部から〝わけのわからない映画〟と不評を買って解雇されたというエピソードで知られているけれど、その10年後に、より一層〝わけのわからない〟『悲愁物語』を松竹で制作し、物議を醸しました。『悲愁物語』は、若く美しい女子プロゴルファーがスターの地位を獲得するものの、嫉妬に狂った主婦族に抹殺されるという物語で、人気者の主人公の女性が妬まれて辛い目にあうというストーリー構成が『花扉』とそっくり。しかも、新人の白木葉子が初主演を飾った『悲愁物語』に対し、今作は新人の初名さんが初主演という点も重なります。鈴木監督は今作にインスピレーションを受けて『悲愁物語』を作ったのではないか!?と思わず勘繰ってしまいました。
 一方で、松竹が誇るエース級の俳優たちの共演は見事。笠智衆はもちろんのこと、芸達者な南原宏治に、怒れる若者役が似合う三上真一郎、小津映画の名脇役・三宅邦子やにっぽんのおばあちゃん女優・高橋とよの登場は、名画座ファンにはうれしいし、杉浦直樹と山内明の2大サイコパスも最高です。
 そういえば、岡田茉莉子とアイ・ジョージが共演し、三國連太郎や笠智衆、丹波哲郎も出演した渋谷実監督の『二人だけの砦』(63)も、キャストが豪華だけど作品としてはZ級の松竹映画でした。改めて、迷作映画を輩出する伝統もある松竹映画の奥深さを思い知らされた!

絢爛たる殺人 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 加戸敏監督の『絢爛たる殺人』は、劇場内で起きた殺人事件を名警部が解決する、イギリス映画のシャーロック・ホームズを思わせる推理もの。宇佐美諄がホームズ、加東大介がワトソンの立ち位置で登場します。
見どころは、今作でデビューを飾った菅原謙二。白いコートが二枚目ぶりを際立たせていました。その一方で、戦前から活躍する宇佐美諄も端正な顔立ちが魅力的で、この系統の美しさを現代のビジュアル系ロッカーが引き継いでいる不思議なバトンタッチも興味深く感じました。
 宮川一夫のカメラも素晴らしいけれど、彼はやはりカラー映画を撮ってこそその手腕が輝くなと再確認。

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花扉 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

絢爛たる殺人 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

2023 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

12月 『恐怖の対決』『踊子物語』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

恐怖の対決 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 12月は、岩間鶴夫監督の『恐怖の対決』を放送。リングを去ったボクサーが暗黒街のボスと対決する、アクション作品です。
 傷害罪を犯してボクシングを辞めた主人公を演じるのは、名画座ファンを虜にしてやまない大木実。松竹時代の大木さんといえば野村芳太郎監督の『張込み』(58)が思い出されますが、今作も愚直で正直な男を好演していて、その魅力がさく裂しています。当時の松竹の俳優を並べてみても、この役は大木さんをおいて他にはいない。
 一方で、大好きな有沢正子と杉田弘子の共演が拝めるのも今作の見どころのひとつ。ともにあまりメジャーになれなかった女優なのだけど、それぞれに美しく、特に杉田さんはそのクラシカルな美貌が目を引きます。杉田さんというと、野村芳太郎監督の『月給13000円』(58)で、誰もが狙う美女でありながら、うだつの上がらない南原宏治演じる主人公に思いを寄せる女性を好演した印象が強く、戦前なら大スターだったかもしれないと思わせる美しさがその魅力。今作の杉田さんは特に美貌が際立っていて、完全にノックアウトされてしまった!
 脇を固める布陣も注目。暗黒街のボスを演じる杉浦直樹が安定の悪人ぶりを見せる一方で、彼の第一子分を演じた高野真二がここまでの悪役をやるのは珍しく、バスハーモニカらしきものを演奏する二番目の子分役の小瀬朗もいい味を出しています。また、大木さんの弟を演じる清川新吾がこれほどフィーチャーされることもレアで、有沢さん演じる光枝に付きまとう男として登場する佐竹明夫も絶妙。小説家タイプの葛城といううさん臭い男がよく似合う。
 さらにストーリー展開も秀逸で、冒頭に描かれる刑務所内のモブシーンが、物語後半の争いと対になる演出には感心しました。アクション映画としてなかなかの秀作でありながら、家族の問題をしっかりと絡ませてくるあたりが松竹映画らしく、子供たちが壁に落書きする場面も、大らかな時代だったと懐かしく思い出されます。

踊子物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

 戦災孤児の少女がある男性に支えられ、バレリーナとして花開くまでの物語を描いた『踊子物語』は、小石栄一監督がメガホンを取った大映映画。三條美紀が初主演を飾り、上原謙が特別出演しています。三條さんの美しさや日本のバレエ黎明期を支えた貝谷八百子の登場もさることながら、個人的に注目したのは、活動写真の弁士やラジオの朗読で名調子を披露した人として有名な徳川夢声の出演。上原謙の歌声も必聴です。

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恐怖の対決 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

踊子物語 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

11月 『十代の狼』『銀の長靴』 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

十代の狼 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

11月は、若杉光夫監督の『十代の狼』をピックアップ。純情な娘たちを毒牙にかける愚連隊と、彼らを追う刑事たちの物語を描く、社会派ショートプログラムです。
 長野から上京し、愚連隊の仲間入りをした主人公の青年・鉄夫を演じるのは青山恭二。現代では二枚目と呼べるのかわからないながら、人懐こい雰囲気が貴重な俳優。とは思いつつも、個人的にはやはり、大好きなバイプレーヤーの梅野泰靖に目を奪われました。日活作品では悪人やスネ者の役が多い梅野さんが、本作では鉄夫の兄貴分で絵に描いたような不良グループのリーダーを演じていて、それは彼らしさが失われてしまうのではないかと危惧したものの、杞憂に終わりました。やっぱり梅野さんは期待を裏切らない!
 そして、不良グループが殺人事件に絡んでいるのではないかとにらんで捜査する警察サイドでは、ベテラン刑事の佐野浅夫と若いエリート刑事の垂水悟郎の対比を見事に描写。特に佐野さんは製作当時は35歳のはずなのだけど、刑事の勘に頼って足を使った捜査をするひと昔前の刑事を巧みに演じていて、芸達者ぶりに感服しました。
 そんな佐野さんが演じる松下刑事に、飲み屋の店員で松下に恩のあるゆり(斉藤美和)が、事件に関する有力な情報をもたらすシーンが二度あるのだけど、その場面を見ていて思いだされたのは、若杉監督の傑作『七人の刑事終着駅の女』(65)。こちらの作品も、刑事が聞き込みをする人物を丁寧に描き、それらの小さなエピソードの数々をまとめてひとつの大きなドラマにする手法がとられていて、地方から上京してきた若者が犯罪に巻き込まれるストーリー展開も、本作と重なります。
 一説によるとショートプログラムは、3本立てで上映する地方の映画館向けに作られ、東京では上映されなかったと聞いたことがあるのだけど、『七人の刑事~』はショートプログラムではないものの都内ではなぜか数日で公開が終わってしまい、幻の映画と呼ばれたとか。そんな上映秘話も含めて、『七人の刑事~』のエチュード的作品が本作なのではないかと思うと、さらに味わい深く感じられます。

銀の長靴 | 「小西康陽の名画座の最前列で。」特設サイト|衛星劇場

横浜を舞台に、だるま船に住む水上生活者の少年・太郎とバレリーナ・久美の交流を描いた『銀の長靴』は、市村泰一監督作品。見どころは、久美を演じる由美かおるの華麗な舞踊シーン。蝶々・雄二をはじめとしたお茶の間の人気者たちも物語を彩り、黒澤明監督の『どですかでん』(70)の主演に抜擢された頭師佳孝の天才子役ぶりも光る!

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