作品詳細
劇団新派文芸部の脚本・演出家、斎藤雅文の声掛けにより水谷八重子、波乃久里子、河合雪之丞をはじめとした劇団新派の面々が集結し、一夜限りの特別公演として上演した作品を、130年を超える新派史上初となるオンラインで配信した。
■一、邦楽、語りと舞『八つ墓供養』
2月に公演中止となった新橋演舞場新派公演『八つ墓村』の後日譚として、登場人物たちの3年後を描いた、齋藤雅文書き下ろしによる、新たな物語。『八つ墓村』の劇中で披露された「八つ墓神楽」を、振付として新派作品にも数多く携わってきた尾上墨雪(尾上流三代家元)が八つ墓明神役で出演し、この日だけの舞を披露。
■二、新作芝居『湯島の春』
新派珠玉の名作たちが新たな生命を得る。『婦系図』のお蔦、『明治一代女』のお梅、『大つごもり』のお峯、『日本橋』のお千世……新派を代表する悲劇のヒロインたちが、もし、芝居の幕が下りてからの人生を生きていたらという趣向で贈る、新派愛に溢れた新作。新派熟練の女優たちの口から発せられる名セリフに彩られる世界を楽しめるだけではなく、演劇愛に溢れたセリフの数々も散りばめられ、コロナ禍に生きる私たち現代人へのメッセージに充ちた心に響く作品に仕上がっている。
■三、朗読『明治一代女』より 新富座芝居茶屋の場
川口松太郎が描いた名作『明治一代女』から名場面をおくる。今回は朗読劇として、波乃久里子のお梅、水谷八重子の秀吉という新派二大女優の競演に加え、すでに定評のある柳田豊(90歳の大ベテラン)の福地桜痴という、現在考え得る最高の配役での上演。さらには、おそらくこの機会でして観ることのできない女方・河合雪之丞の巳之吉役。朗読という形だからこそ、川口松太郎の書いたセリフが際立ち、花柳章太郎や初代水谷八重子はじめ、数々の名優により磨き上げられてきた新派独特のセリフ術を味わうことができる。
(令和2年・2020年11月12日 六行会ホール)